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視線の先に恋心。(1)



※NL要素を含みますので、苦手な方はお気をつけ下さい。



























私は、大和くんが好きだった。
彼はかっこよくて長身で運動神経もよくて頭もいい。
そんな高スペックな大和くんは、当然女子にもモテるし、人望も厚い。

だから正直、クラスでも地味なグループに所属している私は大和くんに興味がなくて、
「こんななんでも超人みたいな人、ほんとにいるんだな」くらいにしか思っていなかった。

これは、そんな私が大和くんを好きになった時の話。







ある日の授業中、眠気を紛らわすために窓の外に目を向けようとした。
(この先生の授業はつまらない)

すると、たまたま窓際の席である大和くんが目に入った。
大和くんは整った顔を無表情にしたまま、ぼうっとしていた。
彼はきれいな顔をしているけど、必要以上に笑ったり、怒ったりしているイメージがない。

つまり、どちらかというと、表情に乏しいといった印象があった。

「――――――――、」

黒板の方でもなく、先生が立っている方でもない場所を
あまりに見つめているので、私はその視線の先が気になった。

ひょんな好奇心から、私は大和くんの視線を辿ってみる。
もしかして、同じ学級委員をしている田上さんかな。
意外と、派手なグループの中心にいる中瀬さんかも。

どこかワクワクしながら、辿りついた視線の先には。


「おい、唐沢!起きろ」


先生の怒鳴り声に、ハッとする。

―――――私の視線の先にいた唐沢くんが、気だるげに茶色い頭を上げた。

「ごめん、せんせえ。眠気は不可抗力だから!」

おどけながら謝る唐沢くんを中心に、クラスに笑いが起こる。
先生は「敬語を使え」だの小言をこぼしながら、不機嫌そうに授業に戻った。

1年の時の唐沢くんは、俗にいう不良だった。
だから、2年のクラス替えの一覧表に唐沢くんの名前があった時は、正直ついてないとすら思った。

でも、噂よりも唐沢くんは悪い人には見えなかったし、
あまり詳しいことを知ってるわけじゃないけど、
何より2年になってから、彼の印象は変わったように思える。
1年の時から仲の良かった熊田くんもそうだけど、
どうやら2年のクラスで大和くんや弥栄くんと仲良くなったことで、
何らかのいい影響があったんだろう。
そんな気がしていた。

でも、どうして大和くんは唐沢くんを見ていたんだろ。
友達だから・・?

疑問に思いながらも、また何気なく窓際へと視線を戻す。

大和くんは、微かに笑っていた・・ように見えた。

まあ、たしかに唐沢くんの言動にクラス中が笑っていたけど、
あの大和くんが笑みを見せるのはちょっと珍しいな。

・・・しかも、あんなに優しい笑顔。

そんな私の疑問は解消されないまま、授業はたんたんと進んでいった。










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