視線の先に恋心。(2)
その日から、私は私自身の疑問を解消するために、
大和くんの観察をすることが日課になっていた。
観察を始めてから1週間が経とうとしていたけど、
やっぱり大和くんは時折唐沢くんのことを見ていた。
唐沢くんを見る大和くんの視線はどこか優しくて、
それを見ている私まで、なぜか心がほかほかした。
そのほかほかが心地よくて、私はまた大和くんを見たくなる。
私の疑問は一向に解消されなかったけど、大和くんを見ていられるこの日常はなんとなく好きだった。
「ねえ、なんで最近大和くんのことばっかり見てるの?」
休み時間中、突然友人のアリサにそんなことを聞かれた。
人に気付かれるほど、私は大和くんのことを観察していたのかと、少し恥ずかしくなる。
「えっ」
「もしかして、大和くんのこと好きとか?」
意外と理想高いな〜と笑われながら、しまいには「応援するよ!」とか、
無責任なことを言われる。
「違うよ!ただ、私は観察してただけでっ」
「観察?」
私の無意味な弁解に、ますますアリサは嬉しそうな顔をする。
なんで女子って、こんなに恋バナに食いつくんだろう・・。
「観察って、好きだから観察してるんじゃないの?」
―――――好きだから。
好きだから、見てる・・の?
「好きだからその人のこと見てたいって、フツーでしょ。恥ずかしがらなくっていいよ〜」
アリサの声は私の耳に入っては、抜けていった。
唐沢くんのことを目に止めていた大和くんは、唐沢くんのことが好きなの?
そして、そんな大和くんをずっと見ていた私は、大和くんのことが好きなの?
胸のほかほかの原因は、"好き"だからなの?
いろいろな疑問が脳内を駆け巡って、パンクしそうになる。
「ちょっとー!聞いてる?」
アリサの声で我に返り、「ごめん、ごめん」と言って、笑った。
大和くんは、唐沢くんのことが好き。
私は、大和くんのことが好き。
――――――――初めて知った恋は、始まる前から片思いだったんだ。