慢性腎不全

このページのTOP  内科系疾患  鍼灸治療  症例報告  慢性腎臓病 

治療につきましては呉竹学園東京医療専門学校、呉竹学園東洋医学臨床研究所の御指導、アドバイスをいただいております。
現代医学編

慢性に推移し、かつ不可逆的に進行する腎機能障害である。
慢性腎不全の原因となる疾患、病態は数多く保存期の頻度を明らかにするのは困難である。慢性腎不全がさらに進行すると最終的には透析療法が必要となるので、透析導入時の疾患別統計により疾患頻度を知ることができる。1998年から透析導入となった患者の原因疾患としては糖尿病性腎症がトップとなり、2004年では新規透析導入となった患者の41.3%を占めている。慢性糸球体性腎炎は年々減少傾向となり、2004年では透析導入患者の28.1%となっている。腎硬化症は8.8%増加している。
1.病態
正常な腎機能は次の4つに要約されている。病因によって差があるものの、これらの機能が障害されることにより諸症状が出現することになる。
@代謝産物や毒物の排出
A体液の恒常性の維持
B内分泌器官あるいは代謝器官としての働き
C骨代謝

2.臨床症状
腎機能障害の進展に伴い、4つの病期に分けられる。その病期により程度の差があるものの多彩な症状がある。
@腎機能減少期(クレアチニンクリアランスCcr>50ml/分)
臨床的には無症状である。
A代償性腎不全期(30<Ccr<50ml/分)
夜間尿、軽度の貧血、軽度高血圧を示す。
B非代償性腎不全期(10<Ccr<30ml/分)
全身倦怠、多尿、中程度の貧血、高血圧がみられる。
C尿毒症期(Ccr<10ml/分)
浮腫、肺水腫、高度貧血、重症の高血圧がみられる。

・中枢神経症状
易疲労、集中力低下、不眠、頭痛、痙攣、昏睡
・末梢神経症状
下肢静止不能、末梢神経炎、末梢神経伝導速度遅延
・循環器症状
高血圧、不整脈、労作時息切れ、起座呼吸、心膜炎、心タンポナーデ(低血圧、脈圧減少)
・消化器症状
食欲不振、口臭、悪心、嘔吐、便秘、下痢、吐血、下血
・呼吸器症状
Kussmal(クスマウル)呼吸、胸膜炎、尿毒症肺
・血液異常
貧血、出血傾向
・内分泌症状
成長障害、性機能障害、甲状腺機能障害
・骨代謝異常
腎性骨異栄養症(二次性副甲状腺機能亢進、線維性骨炎、骨軟化症)、アミロイドーシス
・眼症状
網膜症
・皮膚症状
乾皮症、掻痒症、皮下出血
・免疫異常
易感染性、悪性腫瘍

3.身体診察
@全身・・・やせ、微熱
A皮膚・・・皮膚の蒼白、出血斑、浮腫、乾燥
B眼・・・眼瞼結膜の蒼白
C肺・・・ラ音、胸水貯留所見
D心血管系・・・高血圧、心雑音、心拡大、頚静脈怒張、心膜摩擦音、肝腫大
E神経・・・昏睡、ミオクローヌ、知覚の低下、腱反射の減弱・消失

4,検査所見
@尿検査
蛋白尿や血尿の持続、細胞性沈渣成分の出現。尿比重、尿浸透圧の低下、尿中βーミクログロブリンの高値、尿中NーアセチルーβーDーグルコサミンターゼ(NAG)活性高値
A末梢血液検査
正球性正色素性貧血[鉄欠乏性貧血(IDA)を合併し、小球性低色素性貧血を呈することもある。]、白血球数(WBC)・血小板数正常
B血液生化学検査
BUN(尿素窒素)高値、血清Crc(クレアチニン)高値、Na低値、K高値、Ca低値、P(リン)高値、尿酸(UA)高値、βーミクログロブリンの高値。
C凝固線溶系
出血時間の延長、血小板機能異常
D内分泌検査
インタクト副甲状腺ホルモン高値、エリスロポエチン(EPD)産出低下
E血液ガス分析
代謝性アシドーシス(アニオンギャップ増加)
F腎機能低下
糸球体濾過量(GER)の低下
G眼底検査
網膜症、動脈硬化症
H24時間血圧測定
高血圧
I心エコー検査
心機能低下、心嚢水貯留、下大静脈(IVC)拡大
J神経検査
神経伝達速度遅延、脳波異常
K画像診断
腎エコー。CT、MRIでの腎委縮の描出
Lレノグラム
分泌相のピークに達するまでの遅れ、排泄相の遅れ。
M副甲状腺エコー検査
副甲状腺の腫大
N骨塩量
骨塩濃度の半定量法(QCT)、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)なとで骨塩量の減少

5診断・鑑別診断
@病歴情報(腎障害を示唆する疾患の既往歴、家族歴)、妊娠歴、常用薬の確認、検診記録(蛋白尿、血尿、高血圧)の把握。
A諸検査、特に尿、生化学、腎機能検査所見の異常。
B画像診断で腎委縮を確認。

6,治療の基本方針
@食事療法
・蛋白制限、エネルギー必要量の確保
・水、食塩摂取量制限
・高カリウム食、高リン食の回避
・必須アミノ酸併用
A薬物療法
・腎性貧血の改善 EPD療法
・二次性副甲状腺機能亢進症のコントロール
・高血圧のコントロール
・尿毒症症状の改善 経口吸着炭素製剤(クレメジン)投与
B透析療法
・血液透析療法(HD)
・腹膜透析療法(CAPD,APD)
C腎移植