鍼灸治療

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1.膀胱の神経支配
(1) 交感神経・・・節前線維は上部腰髄から起こり、上下下腹神経叢を通り膀胱神経叢に至り、節後線維となって膀胱括約筋および膀胱排出筋に分布し前者を収縮させ、後者を弛緩さて畜尿的に働く


※ 上、下下腹神経叢は下部胸髄(Th11、Th12)と上部腰髄(L1、L2)から節前線維をうける。

(2) 副交感神経・・・節前線維は仙髄(S3、S4)から起こり、骨盤神経を通り膀胱神経に至り、節後線維となり膀胱括約筋と膀胱排出筋に分布し、その作用は交感神経と拮抗し、排尿に働く。

※ 上、下下腹神経叢、膀胱神経叢などの神経叢は交感神経、副交感神経を含む。
2.間質性膀胱炎の痛みの部位と周辺の体性神経*1
痛みの部位・・・下腹部、尿道、膣、会陰部、鼠経部、大腿部、腰部、側腹部(男性の場合意嚢部にも痛みが放散)

(1)腰神経叢  Th12(第12胸髄)からL4(第4腰髄)

腸骨下腹神経  Th12、L1(第1腰髄)
知覚枝  外側皮枝・・・臀部の皮膚  前皮枝・・・下腹部および恥丘の皮膚

腸骨鼠経神経 L1
知覚枝  前陰嚢神経、前陰唇神経・・・陰嚢または大陰唇の皮膚

陰部大腿神経 L1、L2(第2腰髄)
知覚枝  大腿枝・・・大腿前面上部の皮膚 陰部枝・・・陰嚢内様膜、大陰唇、大腿上端部の皮膚
外側大腿神経 L2、L3(第3腰髄)・・・大腿外側の皮膚
閉鎖神経    L2、L3、L4(第4腰髄)・・・知覚枝  前枝・・・大腿内側の皮膚

(2)仙骨神経叢 L4からS4(第4仙髄)
後大腿皮神経 S1(第1仙髄)からS4
下殿皮神経・・・臀部皮膚に行く   会陰枝・・・会陰および陰嚢、大陰唇外側部

(3)デルマトーム、ヘッド帯
デルマトーム  膀胱   L1からL4、S1からS3

ヘッド帯     膀胱   Th11からL1
3.考察と結論
間質性膀胱炎の痛みの部位とデルマトームとヘッド帯がほぼ一致し、膀胱の神経支配の自律神経が出る脊髄の高さと、痛みの部位にある体性神経(知覚枝)が出る脊髄の高さが一致することから、間質性膀胱炎の痛みは内臓ー体性反射による関連痛ではないかと推測することができる。このことからこの高さに存在している経穴を使用することにより、体性ー自律神経反射によって膀胱に起こっていると思われる変調を調整することことができるのではないかと考えます。
4.使用できる経穴
交感神経抑制が期待できる経穴
  胃兪(Th12、L1)、三焦兪(L1、L2)、腎兪(L2、L3)
※腎兪は経験的に畜尿に動く傾向があるので使用すべきではないと考えます。

副交感神経亢進、膀胱の機能調整が期待できる経穴
  上髎(第1後仙骨孔部)、下髎(第2後仙骨孔部)、中髎(第3後仙骨孔部)、下髎(第4後仙骨孔部)

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