前回、動きについて述べましたが、動きについてはCFFという指標があります。これはCritical Flicker Frequency“臨界融合頻度”といって、一定の点滅する光を見た時に、これを連続した光として感ずる限界の点滅頻度(周波数)を示す指標です。TVのコマ数が60枚/秒に設定されていますが、これ以上コマ数を増やすと連続画像として見る事ができ、コマ数が少ないと1枚1枚が独立した画像として見える事を応用しているのです。
このように、CFFの数値が高い程、動画のコマ数のように動きの速い明暗変化を検出できる事になります。このCFFは様々な動物で計測されています。但し、測定方法も各種異なり、測定年代によっても数字も異なるようですので、参考数字として考えて下さい。
数字をみてわかるように、ミツバチやハエなどの“飛ぶ”昆虫類が断トツに高い数字を示す事が分かります。前回紹介した空間解像力の低さとくらべ、昆虫類のCFF値の高さは非常に驚異的です。運動視の優れている昆虫の眼は、形よりも動きの検出能力が非常に優れているといえるでしょう。動きの検出については、鳥類が昆虫に続き、哺乳類や魚類は比較的明暗変動に対しては相対的に鈍感な眼をもっている事が分かります。
以上のように、視覚と動物について整理すると、昆虫類は、近くを見、動き検出に適した視覚と高速処理脳をもち、一方、巨大な脳をもつ人間は、速さ(動き)よりは、形などの精緻な情報を得る事に重点をおいているといえます。このような中、鳥類は動きとともに精緻な情報も処理できる特異な視覚を保有しているといえるでしょう。視覚という観点では鳥類は哺乳類以上の、非常に優れた感覚を発達させ、またタコも海中では人間と同等の感覚をもっているように見受けられます。
分類 | 動物種 | CFF | 分類 | 動物種 | CFF |
哺乳類 | 人間 | 15-60(網膜中心) | 爬虫類 | ヤモリ | 20 |
ネコ | 15-60 | 両生類 | カエル | 50 | |
モルモット | 10-40 | サンショウウオ | 5 | ||
鳥類 | ハト | 116-150 | 昆虫 | トンボ | 300 |
セキセイインコ | 115 | ミツバチ | 60-310 | ||
ニワトリ | 106-120 | ハエ | 60-260 | ||
魚類 | コイ | 20-40 | チョウ | 150 | |
マダイ | 25-35 | 甲虫 | 20-30 |