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階調表現:組織的ディザ法

 一定面積を単位として、この面積の中の白・黒の画素数を変える事で階調を表現する方法があります。電子写真プリンタなどは、トナーを付着させるか(黒)、させないか(白)、という2つの状態で記録します。このような記録方式に適した手法として、組織的ディザ法を紹介しましょう。
 一定の値と画像信号を比較すると、この固定値を境にして、全面が白になるか黒になるかのどちらかの画像となり階調画像は得られません。階調を表現するには、白黒の密度を変化させる事がポイントです。このために、ある一定面積の中で、白黒の画素の数を変化させます。これを面積階調といいますが、この方式では”固定した同一の閾値”と画像信号を比較するのではなく、一定の大きさの中で、閾値自身も変化させるようにし、この変化する閾値と画像信号を比較させます。
 組織的ディザ法では、画像信号と比較する閾値を一定面積中で、あるルールにもとずいて配置します。今、画像信号が仮に0〜1の範囲にあるとし、階調数を17段階(全白を含め)で表現すると仮定します。こ場合、画像信号を0〜1/17、1/17〜2/17,・・・・,(n-1)/17〜n/17,・・,16/17〜1のように17分割する事になりますが、nに対応して閾値は1〜16までの16個の値をとります。
 組織的ディザ法では17階調を表現する場合、4画素×4画素を1つの単位とし、この中に1〜16までの16個の閾値を配置します。例えば、下のように配列させるのです。

1 9 3 11
13 5 15 7
4 12 2 10
16 8 14 6
 上記配列を良くみると基本が2画素×2画素の4つの部分から構成され、この4つの部分内では左上から右下に、また右上から左下へと、この
ように閾値が、たすき掛けで大きくなるように配置されている事が分かります。このような配列をベイヤー(Bayer)パターンといいます。このような配列をする事で、階調を変化させる事はもちろんの事、画像の解像度も極力確保するように考慮しているのです。ちなみにこの配列で白から黒までどのように階調が表現されるか示すと、下図の様になります。
 
 画像全体を4×4画素の領域に分け、各領域内の画素毎に対応する位置の閾値と比較する事で、画像全体として17階調の画像が得られる事になります。もっと階調数が欲しい、例えば、65階調が欲しいのであれば、画像を8×8画素に分割し、8×8に対応したベイヤータイプの閾値配列と比較すれば良いのです。一般的には2の巾乗、2n×2nのサイズの閾値配列で(2×2+1)階調の画像を表現できる事になります。

 以上はベイヤーパターンを基本とした説明をしましたが、閾値配列を例えば
 7 8 9 10
 6  1 2  11
 5  4  3  12
 16  15  14  13
のように渦巻き配列にすれば、下の図のように、黒画素が分散せず、集中した、90度の網点で画像が形成される事になります。但し、上のベイヤーパターンと比較すると、周囲領域では黒画素が出現しにくくなり、閾値配列のサイズが大きくなるに従い、画像の細かい変化の再現が難しい、つまり解像度が低下しやすい欠点が出てくる事が分かりにます。閾値配列をもう少し工夫したり、配列サイズを大きくしてもべイヤーパターンの思想を反映させる事で、黒ドットが集中するパターンでも、解像度を改善させる事が可能になりますが、少し専門的になりますので省略します。ここではベイヤーパターン、渦巻きパターン、網点パターンの3つの閾値配列の代表例があるという事を知って頂ければ十分でしょう。
 
 なお網点パターン例としては
 12 5 7 10
 13 1 3 15
 8 9 11 6
 4  16  14  2
などがあります。デジタルコピアの開発が始まった頃にはこのようなパターンの工夫に私も大分熱中したものです。
 このように一定のルールで閾値を配列させるのがこの方法の特徴です。なお、今までは、等間隔の閾値について述べましたが、閾値分布を考え、閾値間隔を不均一にする事で、暗い部分に対し階調数を多く割り当てて全体に暗い画像を見やすくしたり、逆に明るい部分に階調を多く割り当てる事で明るい部分から暗い部分への移り変わりを滑らかに再現する事も可能となります。手前味噌ですが、これらについて私も少し寄与いたしました。

なおディザは”dither”と記します。また上記の説明は白黒の2値について説明しましたが、白黒色の他に灰色等も加えた3値以上への拡張も可能です。さらに、カラーイメージセンサにおいてもカラー画素を互い違いに配列する事がありますが、これもベイヤー配列と名付けられています。


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