MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

4.動物の眼・視覚

節足動物の眼:複眼2

 さて、それでは次に節足動物の特徴である複眼の構造そのものについて紹介しましょう。複眼には連立像眼と重複像眼の2つがあります。連立像眼は昼行性のトンボやチョウ、ハチ類などに、重複像眼は、ガやホタルなどの夜行性昆虫やザリガニ、伊勢エビなどの甲殻類にみられます。
  連立像眼は個眼(前回の図を参照)が集まったものですが、個眼はオモクロームなどの黒色素細胞で取り囲まれており、1つの個眼に入射する光は1つの個眼のみで受光され、同じ光が隣接する個眼に入射する事はありません。但し、個眼1つ1つの“視野”は隣同志で重複しているものが多いようです。
 重複像眼では個眼を取り囲んでいる色素細胞内の色素粒子(オモクロームなど)が、光の明暗により上下に移動します。

 

明るい時には、連立像眼のように視細胞の外側を囲み、感稈部に入る光を遮光していた色素細胞内の粒子は、暗い時には円錐晶体を取り囲むように上部に移動します。このため光が乏しい時に感稈部・視細胞を囲む色素細胞の部位は透明となって個眼間の遮光部はなくなり、近隣する複数の個眼からの光を受光するようになります。つまり重複像眼は光が弱い所で感度を上げることができる眼なのです。但し複数の個眼からの光を受光するため、像はボケる事になります。ここで面白いのはザリガニや伊勢エビの重複像眼で、円錐晶体に特殊な構造が見られます。先に記したように、これらの生物では個眼の形状が四角になっています。従って円錐晶体も直方体に近い形をしていますが、円錐晶体にはレンズ機能はなく、代わりにこの直方体の4つの側面が反射鏡になっているのです。この反射鏡は感稈部に焦点が合うように構成されています。更に面白い事に、エビは幼生の時は明るい浅瀬に棲み六角形の連立象眼をもっていますが、成長して暗い深海で生息するようになると連立象眼を捨て、真四角の反射型レンズ付きの重複象眼を持つようになります。またガでは視細胞と基底膜の間に反射膜(タペータム)があります。
 さて最後に人などの単眼(カメラ眼)と複眼の差異について結像という観点でまとめてみたいと思います。この2つの大きな違いは、
カメラ眼では網膜には倒立像が形成され、複眼では正立像が形成されるという事です。このためカメラ眼をもつ動物では脳で正立像に変換・再構築するという手間が必要になりますが、複眼では処理が不要です。また人では眼球が常に動いて光順応を防いでいますが、昆虫などでは静止すると光順応のために動いている物体しか見えません。昆虫は基本的に“自ら動く事で眼が見える”という大きな相違点があります。脳の大きさの差異がこのような所に反映されていると言っては大げさでしょうか?



copyright©2011 Mark Pine MATSUNAWA all rights reserved.