MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

3.動物の体色・斑紋

警告色による擬態2:

ホ)昆虫1:ハチへの擬態・・黒と黄色の縞模様
 鳥は毒針をもつハチを餌として捕食するのを避ける傾向にあります。中にはハチの針をとってから食す鳥も知られています(ヒタキ類)が、他の昆虫がいればそちらの方を優先して餌にするようです。このためハチに擬態し、捕食を避ける昆虫がいます。その代表はアブやカミキリムシです。ハチのトレードマークは黒と黄色の縞模様でスズメバチの怖さをこの色パターンで覚えている方も多いのではないでしょうか? ハナアブはスズメバチそっくりに擬態しています。またカミキリムシでもハチに擬態している仲間が多くいます(例.トラフカミキリやハナカミキリの仲間)。
 一方、ガの仲間であるスカシバはほとんど鱗片をもたず、黄色と黒の縞模様をしており、スズメバチやアシナガバチに似せています。但し、黄色の縞帯の数は種類により異なるようです。また後ろ足に黄色や橙色の毛を生やし、ミツバチのように花粉集めを装っている種類もいます。また黒と黄色の色彩はハチ以外でも毒をもつ蛾ガ多く採用している色彩パターンです。このためトカゲ類や鳥類ではこのパターンをもつ昆虫を食べるのは避ける傾向にあります(警告色)。

ヘ)昆虫2:チョウや蛾、テントウムシ・・赤と黒、白と黒の模様等
 マダラガは昼行性の蛾で、成虫や幼虫ではハチのような黒と黄の他に赤と黒、黒と白や赤・青・黄などの目立つ華やかな色彩をもっています。但し、きれいなチョウには毒がある、という格言の通り、強力な有毒の青酸化合物をもち、食べて“不味く危険”な代表例です。チョウは通常、めまぐるしく飛び回っていますが、マダラガは、昼間、非常にゆっくりと飛び、鮮やかな色彩を目立たせ、自分は不味い、有毒であるという事を念入りに宣伝しています。従ってこのような色彩パターンは警告色になっています。
 同様に、赤と黒のパターンをもつベニモンアゲハはスズメに対して摂食阻害を起こす酸をもっていますが、無毒のシロオビアゲハの雌はこのベニモンアゲハの擬態をしています。
 なおトリバネアゲハチョウは鳥とまちがわれ散弾銃で撃たれたという逸話がある大型の熱帯性のアゲハチョウです。前後翅ともに緑、黄、黒、クリーム色がかった白色等、非常に目立つ色をしていますが、前翅は黒い色が多い反面、後翅は黒の割合が少なくなっています。このチョウは飛翔する時に後翅を広げて多彩な色彩を見せびらかせ、前翅のみを動かして飛びます。これも鳥に対し、その色彩を誇示し、自分は不味い事を警告/宣伝して飛んでいるのです。
 テントウムシは良く眼にし、非常に多くのタイプの斑紋をもっていますが、翅には赤と黒の2色しかありません。テントウムシは捕食者に攻撃されると、肢の関節から苦みのある黄色の体液を出します。この不味さを目立たせ、アピールするために翅に赤と黒の斑紋をもっているのです。
 一方、ホタルの前胸の赤い色も警告色です。またホタルは夜に光りますが、これも警告色ではないか、という考えもあるようです。パプアニューギニアのホタルによる「クリスマスツリー」は有名ですが、この木には甲虫やチョウなど様々な昆虫が集まっており、どの昆虫も体に橙色の部分をもち、昼間はホタルに擬態しています。夜は警告色が見えず、ホタルの光に護られている。またこの警告色がコミュニケーションに利用された、というのがこの考えです。但し、直接的な証拠はまだ見つかっていないようです。
 なお色だけではなく、形も変えて擬態する例もあります。ベニスズメガの幼虫は、普段は丸みを帯びた形をしていますが、危険が迫ると、頭を三角形にさせてヘビに擬態します。



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