MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

3.動物の体色・斑紋

隠蔽:保護色

  擬態は、特定相手の認知システムを利用して、より積極的に特定対象になりきる事です。認知システムとして視覚、臭覚、聴覚を利用しますが、ここでは視覚を中心としたものについて紹介します。擬態で最も有名なものは昆虫のものでしょう。主な捕食者である鳥類への対応策としてこの能力を進化させてきました。既に述べてきたように、特に鳥類の視覚は色彩感覚に優れ、かつ高速の動きをし、視力も良いという強敵です。他方昆虫の眼は色彩感覚は優れ、動きは敏感に感知しますが、解像力にはおとります。従って、この特徴を生かした戦略が採用されています。それでは、まず具体的に保護色による隠蔽からご紹介しましょう

イ)爬虫類:ヘビ
 単色に近いヘビは棲息場所に体色を合わせています。砂漠に住む種では砂や小石に色を合わせています。サイドワインダーは砂漠に住み、夜行性でトカゲや小型の哺乳類を食べますが、この種では住む場所により異なる色をしており、白い砂上では白く、赤い砂上ではベージュや赤味がかった色をしています。またアオヘビは体色が告Fをしています。水辺の草むらなどにいる事が多く、昼行性でカエルやミミズ、昆虫類やクモなどを食べます。

ロ)昆虫:チョウ類
 チョウやガの幼虫の天敵はトリ、クモ、ハチやアリです。これら天敵に対し、幼虫は捕食回避のために素早い運動はできません。このため、まず目立たない隠蔽擬態が非常に発達しています。まずの色から見ましょう。
 蝶類では蛹の色は多彩です。アゲハチョウを例にしますと、ギフチョウの蛹は褐色のみですがアゲハチョウやアオスジアゲハでは高竓倹Fになります(休眠しない蛹)。
 アゲハチョウの幼虫は食草(カラタチ)の葉や小枝、木の幹や枯れ枝で蛹になりますが、葉や若い小枝では告Fに、幹や枯れ枝では褐色になり、背景に溶け込んでいます。既に述べたように、褐色はメラニン色素、告Fはカロテノイドやビリン系色素による色ですが、実はこの変化は主に光ではなく、蛹化の途中で幼虫が受け取った触覚刺激によって起こる事が確認されています。表面がざらざらして触覚刺激が強いと褐色に、表面が滑らかであると、告Fの蛹になります。但し、触角刺激が強くとも、強い光を受けると、この影響で告Fになり易くなります(感覚刺激は頭部側単眼の下にある感覚毛で感知しています)。
 一方、アオスジアゲハチョウは食草のクスノキの葉で告Fや褐色の蛹となりますが背中の黄色い筋は葉の葉脈そっくりになっています。幼虫は頭部側面下方に側単眼という眼をもっていますが、アゲハチョウ科の幼虫の側単眼は紫外線、青色、告Fの識別ができます(成虫の複眼は赤色も識別)。クスノキは常緑樹ですが所々で紅葉がみられます。幼虫は側単眼により、赤色ではなく、背景からの光を葉から反射される光と葉を透過した光の差異を検知し、照度差で蛹の色を決めているようです(側単眼の色視覚との関係については不明)。光の差が少ない時には告Fに、差が大きい時には褐色になります。従って、高フ葉では告Fの蛹が、紅葉した葉では褐色の蛹になります
 このように同じアゲハチョウの仲間でも蛹の色を決める要因は異なっています。なおこのような蛹の色の解明には日本の研究者が大きく貢献しました(参考文献:平賀)。
 この他、シロチョウ科のモンシロチョウでは蛹になる場所の色により蛹の色が決まります。黄色や橙色のもとでは告Fに、青や香A赤色や白色の光で褐色の蛹になるようです。
 この様に、幼虫や蛹は、周りの環境に合わせて色を変え、目立ちにくくしています。なおアゲハチョウの休眠型の蛹はオレンジや橙色もしていますが、これらの色はカロチノイド系色素による色です。



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