MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

3.動物の体色・斑紋

皮膚の概要

 脊椎動物では外側に表皮、その内側に真皮があります。鱗や羽毛、毛は表皮や真皮が変化してできたものです。爬虫類の鱗は魚類の鱗と異なり表皮です。またカメの甲羅は表皮が角質化しその下の真皮と一体化した二重構造になっています。
 
昆虫では表皮は外表皮と原表皮からなり、さらに原表皮は多層構造をもつ外側のクチクラ層と規則正しいらせん構造を持つ内クチクラから構成され、内クチクラ層の下に真皮層が存在しています。一方、蝶類の鱗は表皮の感覚毛細胞が変化して鱗になりました。節足動物はカルシウムを含む硬いキチン質に覆われています。昆虫や節足動物、またヘビなどの爬虫類では体の成長に合わせて皮膚を脱ぎすてる脱皮が行われます。昆虫では幼虫から蛹、成虫へと形態が大きく変化しますが、この時に体色も大きく変化します。
 このように動物やその成長段階により皮膚の形状や色が大きく異なります。補足ですが、
クチクラの主成分キチンは植物のセルロースと同じ多糖類で、糖の分子が多数、1列につながった長鎖構造をしています。一方、哺乳類や鳥類の毛や爪、羽毛などはケラチンからできていますが、ケラチンはタンパク質からできています。哺乳類や鳥類ではタンパク質、つまりアミノ酸が重要であるように、昆虫では糖も非常に重要な構成物質なのです。


哺乳類の皮膚と体色

 犬、馬や豚などの体色はシンプルな白黒や茶色が基調になっています。これは、哺乳類では皮膚や体毛にメラニン色素しか持っていないためです。メラニンに来する黒色素胞とメラニンが無い白色の2つが体色の基本です。その理由は、現在の哺乳類が、全て夜行性哺乳類から進化した事が原因と考えられています。霊長類以外の哺乳類は夜行性になった影響で1〜2色の色視覚しか持たないため、暗い夜に鮮やかな色があっても眼には見えず、生存やコミュニケーションの役には立たないのです。視覚ではなく臭覚を代わりに発達させた事がこのような体色のシンプルさにもつながっているようです。
 一方、例外として、体色を他の方法で変える動物がいます。ナマケモノは動かない動物として有名ですが、
ナマケモノは藻類を体毛に付けます。この事で、特に雨期には、全身を緑色に染め、森の中でカモフラージュ効果を有効にしているのです。
 
メラニンには2種類、黒い色をしたユーメラニンと黄色のフェオメラニンがあります。哺乳類では、これら2種のメラニンと白との組み合わせで若干の色や縞や斑点が表現されています(ネコ類の多彩な毛色もこれらの組み合わせです)。
 
哺乳類の場合、体色は表皮が担っています。表皮と真皮との間に基底層と言われるものがあり、細胞が1層並んでいます。この基底層が表皮の最下層になります。表皮細胞はこの基底層で作られ、細胞分裂しながら外側に押し上げられ最終的に角質化し、表皮の最外部で角層を形成します。角層は水分の保持とともに、生体のバリア層として働き、ウィルスなどを中に通しません。最終的に角層は垢となって皮膚から剥がれおちます。表皮細胞が生じて角質として剥がれおちるまでの期間は“ターンオーバ”と呼ばれ、通常は2週間から4週間で入れ替わります。角質は皮膚の部位により厚みが異なります。人間では足の底や手のひらは厚く100層程度、顔は薄く10層以下、まぶたで7,8層と言われています。従って顔、特に女性は水分保持に気を遣うのもうなずける事でしょう。
 メラニンを作る
色素細胞(メラノサイト)は基底層に存在し、メラニン色素顆粒を周囲の細胞に供給しています。この量の多少により皮膚の色が異なるとともに、シミができるのはこの場所です。基底層にはこのほかランゲルハンス細胞もあり、表皮上部に細胞核を伸ばし、外から角質を通ってくる物質の情報を免疫担当のリンパ球に伝えています。なお表皮は基底層の下に存在する真皮からの養分で養われています。真皮には血管やリンパ管などの他にリンパ球などの免疫細胞が存在しています。
 哺乳類の毛は体温維持と皮膚表面を保護する機能をもっています。毛ができるプロセスは、まず表皮の一部が真皮の中に大きく陥没して先端に毛嚢を生じます。毛嚢の中に毛根があり、毛嚢の中心部で細胞が分裂して角質化して毛をつくります。一定の周期や季節変化で成長期と休止期を繰り返して一定の長さになります。メラノサイトは毛の成長部で盛んにメラニン色素をつくり、分裂した毛の細胞にメラニン顆粒を供給します。メラニンの種類や量により毛の色が決まります。毛の断面構造は、外側がキューティクルとも言われる毛表皮、その内側にコルテックスと言われる毛皮質が、また中心部に毛随質といわれる3つの部分に分かれます。毛はこの毛皮質にメラニン顆粒が含まれる事で着色します。具体的には、
黒から褐色の毛では球系のユーメラニンが、赤毛〜金髪では楕円形のフェオメラニンが主に含まれます。なお白髪にはメラニン色素が含まれていません。なお、紫外線がメラノサイトに当たるとメラニン形成が促進されます。メラニンは上記のように毛に含まれるとともに、周囲の皮膚細胞中にも入り込み細胞膜の外側に存在し、細胞の中に紫外線が入るのを防止します。人間では異なる皮膚の色をもつ人種がいますが、メラノサイトの数は人種によらずほぼ一定です。皮膚の色が異なるのは活性化されているメラノサイトの数に差があるためです。従って人類の祖先の皮膚は黒かった事になります。
 野生種のネズミでは1本の毛にユーメラニンとフェオメラニンが交互に縞模様となり、黒−黄−黒と繰り返すパターンを持つものがいます。これを
アグチパターンといいますが、1つのメラノサイトでユーメラニンとフェオメラニンが順次合成され、これにより茶色ぽい目立たない毛色を生み出しています。
 なお、陸上の哺乳類で最も毛の密度が高いのは、毛皮でも有名な「チンチラ」というネズミの仲間です。



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