MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

3.動物の体色・斑紋

隠蔽:保護色

ハ)貝類

 貝についても、視覚に頼って捕食する動物からのがれるためにカモフラージュしている種がいます。このような貝類の捕食者は肉食性の魚類の多くとタコや、陸生の動物もいます。陸生の動物としてはミヤコドリ(オイスターキャッチャーとも呼ばれます)という鳥やカモメやカラスが海岸近くの貝類を食し、海外ではラッコ、カワウソやアライグマが有名です。
 笠貝は柔らかい体を1枚の丸みを帯びた平たい貝殻で護っている小さな貝です。たいていの笠貝は岩などの表面にしがみつき、干潮時には殻を閉じ、満潮時には海草や緑色植物などを食べていますが、この仲間に、イワフジツボの群生やムラサキインコガイに付着して自らをカモフラージュするコガモガイという小さな(約1cm程度)笠貝がいます。この貝の貝殻は白から茶色、黒に至るまで個体ごとに異なっています。例えばイワフジツボの中では白っぽい貝殻色で背景にとけこみ、ムラサキインコガイの黒紫色の貝殻の上では黒紫色の貝殻色の個体がいます。日中はこのように背景に溶け込んでじっとしていますが、夜間、視覚をたよりにする捕食者がいなくなると藻類を食べに移動します。また同じ笠貝の仲間でカモアシシロガイという北米に住む貝がいます。この貝は住む場所により殻の色が変化する事が確認されています。この貝はカメノテという白い甲殻類の殻の上にいる時には、白い殻をし、黒みの強い岩の表面にいる時には黒い殻をもっています。黒い岩の表面には黒みの強い藻類がありこれを食べる事で藻類の色素が貝殻に沈着します。またカメノテの殻上にいる時には殻上に生えている藻類を摂食するとともにカメノテの殻自体も削って食べ、殻に白い色を沈着すると考えられています。またこのような背景色に溶け込む貝殻色をしている方がオイスターキャッチャーに食べられる頻度が少ない事も確認されましたが、このような色の変化には10ヶ月程度の時間がかかるようです。このような殻の色変化現象は、サザエやアワビでも報告されていますが、詳細はまだわかっていません。
 またカリフォルニアにいる笠貝(テクトゥラ・パレアケア)の生息領域にはヒトデが住み、小さな獲物を捕食していますが、このヒトデは笠貝を植物として判断し捕食しません。笠貝は餌としている植物からフラボノイドを取り込み、これを貝殻自体に取り込むためにヒトデは貝殻のフラボノイドを検出して笠貝を植物と間違うようです。


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