さて今までは動物の視覚や生物の体色について説明してきました。また視覚と体色はセットで考える必要がある事も明らかになりました。動物は食う、食べられない、子を残すという行動をしている事は本書のはじめに紹介しましたが、この行動に視覚や体色がどのように関係しているのか具体例を見てゆきたいと思います。まず本節では、子を残すための同種間のコミュニケーションについて見てゆきましょう。
1.配偶者の識別とアピール行動
2.仲間を識別して縄張りの確保・・仲間から離れる行動
3.仲間を識別して集団で活動・・・仲間と群れる
の3つに分かれるように思われます。この中で1.に関係し、雌に好まれて繁殖の成功率を高める形式を“性選択”あるいは“性淘汰”と呼びます。ダーウィンにより唱えられた“自然淘汰”は有名ですが“性淘汰”もダーウィンにより唱えられたものです。但し、当初は評判が悪く、最近になって遺伝モデルの議論の進行とともにいろいろな証拠があつまっています。
イ)哺乳類
熱帯雨林で樹上生活をしているリーフモンキーという猿がいます。この仲間のアカリーフモンキーの成体は赤褐色の毛をもち赤ん坊を皆で大事に育てる平和な猿です。この猿では成体と赤ん坊では毛の色がちがいます。赤ん坊は白色の毛を持ち、肩に黒い毛が十字に生えています。大人の皆に大事にされ、かつ敵に襲われた時にも大人に連れてもらい逃げられるように成体と異なる目立つ色をしているといわれています。
体色とは関係ありませんが、犬やネコは尿で自分のテリトリーを主張するマーキングが行われます。これは臭覚を用いた仲間同士のコミュニケーションに使われているのですが、このような尿によるマーキングでは紫外線を反射します。この紫外線を逆に目印にして餌を探す鳥がいます。ハヤブサの仲間(チョウゲンボウ)ではネズミの仲間(ハタネズミ)のこのようなマーキング習性を利用して捕食活動をしているというとの事です。