花粉は植物の精細胞や精子ですが、太陽光に直接露光される危険が非常に高い器官です。花粉の生存時間は数時間から数年間と非常に幅広いようです。卵子(胚珠)は萼片や花弁で太陽光から守られていますが花粉はどうなのでしょうか?開花している花の花粉を観察すると黄色の色をしている例を良くみかけます。花粉は、最も外側に花粉接合物質または花粉セメントと言われる粘着性のある物質で囲まれています。粘着性が有ることで、昆虫などの送粉動物に付着したり、柱頭に接着する事ができるのです。またこの内側に外膜、内膜があり中心に体細胞が位置している構造をしています。外膜はカロチノイドの重合体であるスポロポレニンという非常に硬い物質で、また内膜はセルロースとペクチンの重合体でできているのです。このように体細胞はやはりカロチノイド系色素でしっかりと保護されている事が分かります。外膜には表面から外側に直立した柱状形状を持つものがあります。また化石で花粉が見つかる事がありますが、これは外膜のスポロポレニンが化石として残るためで、表面の網目や放射状の模様、また形などは花粉毎に異なる事により植物種が特定できます。奈良の纏向古墳でも大量の花粉がみつかり、ベニバナと特定されました。なお、昆虫で花粉を食料とするものがいます。花粉の成分を調べると、蛋白質が多く、16〜30%、脂肪分は3〜10%、デンプンを1〜7%程度含んでおり、これら昆虫は脂肪分を多く含む花粉を好むようです。ちなみに昆虫と植物との共生関係の初まりは、地面におちている花粉を昆虫が食料とした事ではないかと考えられているようです。またミツバチの蜂蜜は赤〜黄色まで色が異なりますが、これは集めた花粉のカロチノイドにより異なっています。