MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

4.動物の眼・視覚

視覚と行動U

目立つ花でも報酬が少ないと、繰り返し訪問する機会は少なくなります。特に、採餌初期のハチなどでは報酬に関する情報を持たないために、最初“見た目”で植物を選ぶ傾向がありますが、報酬がないと、次第に報酬の多い植物を選択するようになります。また、採餌の経験を積み、視覚を通していったん場所を覚えてしまうと、短時間で効率良く採餌を行うようになります。さらにハナバチ類では、吸蜜した花に“におい”を付け、これを手がかりとして蜜を空にした花を再度訪門するリスクを省いている事が知られています。
 このような中、ランは特殊なケースです。花粉塊で一度に花粉を放出するため、何回もポリネータに訪花してもらう必要がありません。このためランの仲間の多くは報酬を出しません。大きな目立つ花にひきよせられてもそれっきりという、つれない花です。逆にだます事で受粉するケースさえあります。ハナバチランというランは雌のハナバチに擬態し、かつ雌の臭いにそっくりな臭いを出して雄のハナバチを引き寄せます。またクモランというランはクモに擬態しクモを餌とするハチをだまします。ランにしてみれば大きな目立つ花を維持するコストがかかりすぎるのでしょう。
 一方、ウツギ類などの花には花色が変化する例が多く見られます。開花後、一部の花色が変化する現象です。例えばウコンウツギでは咲き始めは薄い黄色をしていますが、数日たつと赤色になります。これは、フラボン類により薄い黄色であったものが、後にアントシアニンが生産され赤くなったものです。これもポリネータに対するシグナルであると考えられています。変色前の花では蜜を分泌し、集中的にポリネータを訪花させて受粉させるのです。このため変色後の花では蜜を分泌しません。変色する事で繁殖の成功率を高めているのです。マルハナバチはこのような花色変化を識別し、蜜のない変色した花は訪門しません。なお、このような花色変化戦略は、花の小さな個体で有効であるといわれています。
 なおポリネータをもっと積極的に農業手段として利用する事も行われています。果樹や野菜、牧草生産などがその代表例です。日本では施設内のイチゴ栽培にミツバチの利用普及が進み、メロンやスイカなどでも進みつつあります。またアメリカではアーモンド、リンゴなどの果実、タマネギなどの野菜、また牧草のアルファルファなどの生産にミツバチなど各種のハチ類が利用されています。



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