MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

4.動物の眼・視覚

構造色1

 いままでは、生物の色素による体色表現について記してきましたが、生物は色素によらず、光の散乱、干渉、反射などを利用して色を表現する事ができます。この方法は色素を利用する方法が一般的になる以前から生物に採用されていたと思われ、非常に古くからある歴史の長い方法です。色素を利用する方法では一般的に色の純度は低くなりますが、光を利用する方法では単波長に近い光を取り出す事が可能であり色の純度は高く、非常に鮮やかな光を出す事が可能です。
 以下、数回にわたり、光の散乱、反射、干渉の順で、どのようにこのような物理現象が体色表現に利用されているのかを紹介します。まず、散乱、反射から。

イ)光の散乱:チンダル散乱
 光の散乱現象で最も良く生物で用いられているのは“チンダル散乱”です。チンダル散乱は光の波長と散乱させる粒子の大きさがほぼ等しい時に生じます。
人やネコの目の色がチンダル現象の代表例です。人やネコの眼の光彩細胞内にはメラニン色素が存在しています。このメラニンの量が多いと黒い瞳となり量が少ないと青〜灰色の瞳となりますが、このような色の変化は色素の大きさと入射光の関係で決まります。メラニンが多いと光はすべて吸収され黒くなりますが、メラニンが少なくなると光の波長と色素顆粒の大きさにより光は散乱される事になります。波長の短い光ほどこの散乱を受けるために青くなります。またマンドリルヒヒの青い鼻や尻の鮮青色、トンボの水色の体色もこの原理で出ているといわれてます。

ロ)光の反射:カナブン・・コレステリック液晶
 光の反射を利用している例としては、昆虫の体色があります。既に述べたように昆虫の皮膚表面は水分の保持や身体を支える目的で頑丈なクチクラで覆われています。
クチクラは棒状や半棒状のキチン質でできていますが、真皮から分泌され固まるまでの間にこのような棒状の高分子ではラセン構造の液晶(コレステリック)となります。生物ではこのようならせん構造は良く見られ、植物ではセルロース繊維からなる細胞壁、茎や葉の仮導管などに、動物では既に述べた、カニや昆虫などの節足動物の表皮の他に、魚や昆虫の卵の殻、魚のうろこなどに蛋白質繊維による構造物に広くみられます。
 さてこのラセン構造ですが、
昆虫の場合、堅い外角皮や柔らかい内角皮がこのような構造をとります。さらに比較的長い周期構造をもつために、ラセンのピッチに相応した波長の光を選択的に反射する場合があります。代表例としては夏場によく見られる甲虫のカナブンの鞘翅で、緑銅色をします。またラセン構造という事から反射光は右か左どちらかの円偏光をする事になります。カナブンでは外角皮によるらせん構造で右円偏光の光が多く反射されているようですが、中には特殊な構造をもち、左右両方の円偏光を示す例もあります。らせん構造については、大英博物館の昆虫を調べた例があり、ほとんどの昆虫が左巻きらせんであったとの事です。特に砂漠に生息している昆虫ではらせん構造により赤外光を反射するという報告もあります。この様に、らせん構造は単に色を出すのみならず体温調節という身体の保護機能まで関係しているようです。 一方、逆に光を不規則に乱反射させて白く見せている昆虫もいます。東南アジアにいるサイホチラスという種です



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