MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

4.動物の眼・視覚

網膜の構造

 さて今回からは、光をどのように受光しているのか、視細胞を中心にその機構を紹介してゆきます。
 まず光を検知する網膜の構造からみてみましょう。網膜と一言でいわれていますが、網膜は10層ほどの集まりです。脊椎動物では、水晶体(レンズ)側から光が入射しますが、レンズ側の網膜には神経細胞が集まっています。光を受光する視細胞(稈体細胞と錐体細胞)は網膜の奥にあり、色素上皮細胞に対向しています。色素上皮細胞を介して脈絡膜の毛細血管から栄養分などが供給されます。
ヒトの網膜は1グラム当たりで比較すると、脳よりも酸素消費量が多く、体内で最もエネルギーを消費する器官といわれています。光受光細胞が網膜の表面(レンズ側)ではなく網膜の奥側に位置し、血液により養分が豊富に供給されている構造になっているのはこのような事情を反映しています。 

  (視細胞と色素上皮細胞)

 色素上皮細胞の視細胞側には多数の細胞突起があります。哺乳類ではこの突起は短く、視細胞外節の先端部を取り囲んでいるだけですが、鳥類以下の脊椎動物ではこの突起は太く長くなり視細胞の内節まで達する事があります。コイなどでは後述の桿体と錐体の間隙を完全に埋めています。入射した光はこの視細胞で電位変化や電気信号に変えられて、神経を通って脳に伝えられるのです。光の感度が高いのは桿体細胞ですが、応答の早さや暗順応の早さは錐体細胞が優れています。暗い所でも眼が見えるのは、稈体細胞が働いているためで、明るい所での視力確保や色の検知には錐体細胞が働いています。ちなみに人間の網膜には約650万の錐体細胞と約1億2,000万の桿体細胞があります。一方、神経節細胞は100万、視神経繊維の数は120万程度しかなく、網膜内で複数の視細胞が1つの視神経繊維に結合し、シグナルが統合されていることがわかります。つまり脳に情報として送られる前に既に前処理が行われている事になります。なお、他の哺乳類には既に述べた様に、人間の数分の1から1/10程度の錐体細胞しか存在していません。従って色に関する分解能は哺乳類では人間が優れています。但し、人間の赤ん坊は生まれた時には色は分かりません。生後2,3ヶ月で漸く色の区別ができますが、最初に認識される色は“赤”であるといわれています。なお、他の動物、例えばキンギョ(4年魚)では約14万の錐体と150万の桿体細胞が確認されています。



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