MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

4.動物の眼・視覚

クモやカブトガニ等の眼:

 カブトガニは生きた化石と言われていますが、多種の眼をもっています。硬い甲羅の両側に2つの複眼を、またその前方に2つの単眼を、また脚の付け根の口の近くに腹眼といわれるものがあります。複眼は約400個前後の個眼から形成されています。個眼の角膜は比較的平らな形状をしていますが、光の出射側では角膜の一部が円錐系のレンズになっており、このレンズは中央部から周辺部にかけて屈折率が次第に小さくなっています。これは既に述べたように、現代の光ファイバーと同じ構造をしています。このようなレンズは蛍やガの円錐晶体でも確認されています。また昆虫や甲殻類では通常1つの個眼に8つの視細胞をもちますが、カブトガニでは10〜13個の視細胞があります。
 カブトガニでは節足動物同様に、視細胞の微絨毛が集合し光を受容する感桿(かんかん)部を形成しています。但し、昆虫や甲殻類の個眼のような円錐晶体はもっておらず、角膜レンズで収束された光が感桿部に入射する構造になっています。また
カブトガニは輪郭を強調する情報処理系をもっている事が判明しています。眼で見た相手の姿を明確にし、餌や捕食者に対応する機構がすでに数億年昔から組み込まれていたのです。
 一方、クモは通常
8個の単眼をもっており、これらは頭の前方、後方に分かれて並んでいます。ハエトリグモは文字通りハエなどの小型の虫を食べる益虫で、最近では都会でも良く見られますが、このクモはクモの中でも眼の良い事で有名です。通常、クモの単眼では像形成は難しいのですが、ハエトリグモも8つの単眼(頭部前方に2つ、左右側方に3つずつ)をもち、中でも頭部前方の単眼は大きなカメラ眼(前中眼といいます)をしています。この眼は細長い筒状の眼で視野は狭いのですが、レンズと網膜間の距離が長く、遠景を見る事ができます。この眼では、網膜自体を筋肉で動かし焦点調節を行い、30cm“も”離れた遠景の対象物を見る事が可能です。前中眼以外の眼は広い範囲(ほぼ360°)をカバーしていますがこのような焦点調節機能はありません。ハエトリグモの眼は頭部に固定されているために、興味をもつ物体を見つけるとその方向に身体を向け、前中眼でその詳細を知り、前中眼を用いて狩りをします。また前中眼の網膜は奥に非常に窪んだ部位があり、中心窩のように凹レンズの機能を果たし、眼の分解能を向上させています。ハエトリグモの眼が良いのはこのような構造によります。
 人間の眼のレンズでは異なる色(波長)の光も同一位置に結像するようになっています(色収差補正)。しかしハエトリグモのレンズではこの補正が十分にできず、色毎に少し異なる位置に結像してしまいます。都合の良い事に、ハエトリグモの網膜は4層構造になっており、これで
色毎に異なる層で光を受容しているのではないかと推察されています。またハエトリグモにも紫外線を含む色覚があると言われています。なおメダマグモでは8つの眼の中の後方中央部の2つの眼が大きくなっていますが、この眼のレンズはゼリー状になっていますが、表面から奥にゆくほど堅くなってゆきます。これにより、魚眼と同様に球面収差の補正をおこなっていると言われています。

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