MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

3.動物の体色・斑紋

食う・食われない・子を残すB

【食われない】 戦略

一方、“食われない”ための方策も被捕食者から各種開発されています。昆虫や動物性プランクトンは身体が小さく、また数も多いために多様な動物の餌の対象になります。このため捕食者から逃れる各種の防衛戦略を発達させているのです。

 まず代表的な防御は、@逃げる事、です。捕食者の気配を素早く察知し、逃走したり、周りの環境に身を隠します。ハエなどは素早くて、ハエたたきで追い回しても中々捕まえられない経験を皆さんはされているでしょう。また逃げる、別の戦略は“動かない”事にもなります。カエルや爬虫類等は動くものを見ます。従って動かない対象は検知できないのです。この最たるものが擬死戦略です。多くの昆虫ではこの戦略が最後の戦略として採用され、またより念を入れて、飲み込まれにくい形で擬死している事も多いようです。コウモリに狙われたガが急降下して落下するのも有名です。また動物性プランクトンは海の表層に多い植物プランクトンを食べていますが、昼は比較的深い海中に移動し、夜間に表層に移動する鉛直移動を行います。これは日周運動といいますが、カイアシ類やナンキョクオキアミではこのような移動は視覚捕食者である魚類やペンギンなどからの逃避行動であると報告されています。周りの環境に身を隠すのは捕食者で採用されているカモフラージュと同じ戦略です。チョウの幼虫である青虫やカエルなどで皆さんおなじみでしょう。これらの動物は葉など、周りの色を見分けがつかないように溶け込んでいます。

 また逃げるのではなく、捕食者を攻撃する事で捕食者を躊躇させる方法もあります。代表例は、A化学的防御です。カメムシは触ると悪臭を放ちます。皆さんも手でつかんだ時に臭い臭いで閉口した事があるのではないでしょうか?但しアジアのある国ではカメムシをタンパク源として食用にし、市場で売っています。テントウムシは捕食者に攻撃されると、肢の関節から苦みのある黄色の体液を出します。さらに食べられても不味い味である事を知らしめ、二度と捕食しないように背中に赤と黒の目印をつけています(警告色といいます)。自分は死んでも仲間を守る戦略といえるでしょう。また、ヘッピリムシ(ミイデラゴミムシ)も触られると、音とともに煙のようなガスを噴射します。同様に他のゴミムシやオサムシなどの甲虫では毒液を噴射する種が知られています。

カメムシでは触って口にいれる捕食者には効果がありますが、いきなり口にいれる鳥やカエルに取っては無効で、テントウムシ型の防衛の方が有効のように思われます。但しカメムシの戦略はアリに対しては効果があるようです。他の攻撃的な防御手段としてはB物理的な防御があります。カマキリは前足を振りまわします。また尻尾にムチをもちアリの攻撃から防御するガの幼虫がいます。またAとBの組み合わせもあります。ハチは針で刺し、刺された部分は大きく腫れあがります。最近大発生しているスズメバチでは死者もでる程です。この他、シロアリの兵隊アリなども噛みついて、傷口に油性や毒液を出し、傷口が凝固しないように、また内部で毒作用を働くようにします。またアゲハチョウ科の幼虫は襲われた時に、オレンジ色の突起(臭角)を出し丁度、が2股の舌を出しているように見せて、鳥などの捕食者を追い払おうとします。この時、臭角からは独特のにおいも出します。この臭角分泌物はアリなどに対する防御物質になっています。


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