ロ)捕食者をびっくりさせる
すでに述べましたが、カンムリベラの幼魚は背びれに2つの目玉模様がありますが、通常は背びれをたたみ、この模様を隠しています。必要な特にひれを開き、目玉模様を見せて相手を驚かせます。
またこのような擬死を起こす場合、硬直姿勢そのものを工夫し、つまみあげられたり飲み込まれにくい姿勢が採用される事も多いようです。ちなみにナナフシやミズカマキリなどは光の照射によっても擬死を起こします。擬死を起こす動物は非常に多く、昆虫以外の甲殻類(ダンゴムシ)、クモなどの節足動物に限らず、軟体動物(ヒョウモンダコ)、魚類(サメ、カワスズメ)、両生類(カエル)、爬虫類(ワニ)、鳥類(ニワトリ、ガチョウ)、哺乳類(リス、タヌキ)等、多様な動物でみられますが、一般的に活動的で、攻撃的な動物では擬死が起きにくいといわれ、トンボやスズメバチがこの代表例になっています。
少し話が飛びますが、カマキリは特殊です。待ち伏せ型の捕食者で基本的に動く物体を餌として認識し、餌の検出機構もカエルと同じく動く物体のサイズを検出して捕獲を行います。但し、カマキリはサイズだけではなく縦や横な長さの動きの方向も検出しており、進行方向に長い物体に捕獲行動を起こします。カエルは動かない物体には反応しませんが、カマキリは餌物体が動かなくなると自分自身が動き(左右前後に頭部を移動させる)、物体の検出を行います。異なる位置から見る事で餌の検出をより確実に行い、この後、捕獲行動に移ります。
南米のニセメダマガエルは尻(腿の付け根)に大きな目玉を2つもっています。敵に襲われると敵に背を見せ、肺を膨らませる事で尻を高く持ち上げ、目玉模様を誇示します。同時に目玉の周りにある腺から不快な分泌物を出します。
また、鰭に目玉模様を持つ魚では、普段この鰭をたたんで目玉模様を隠し、急にひれを開いて目玉模様を出す事で捕食魚をびっくりさせています。
一方、吃驚させるのとは異なりますが、オオヤマネコには瞼に目玉模様があります。眼を開けている時にはこの模様は見えませんが、眼を閉じるとこの目玉模様が見えるようになります。これは眼をとじている(眠っている)時にも眼を開けているように見せているといわれますが、その役割はまだハッキリしていないようです。