MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

3.動物の体色・斑紋

目玉模様

ロ)捕食者をびっくりさせる

 すでに述べましたが、カンムリベラの幼魚は背びれに2つの目玉模様がありますが、通常は背びれをたたみ、この模様を隠しています。必要な特にひれを開き、目玉模様を見せて相手を驚かせます。またサザナミフグという4〜5cmの小さなフグがいます。このフグは鰓孔の斑紋で疑似眼を形成しますが、刺激されると膨れ、自分の身体を数倍に見せかけます。このとき疑似眼も大きくなり、捕食者を逆に威嚇します。シタバガなど黄色や赤など目立つ色を後翅にもつ蛾は通常、後翅を前翅に隠し、隠蔽色で姿を隠していますが危険を感じた時には、急に前翅を広げて後翅を目立たせ、捕食者を驚かせて、その隙に逃げます。タテハチョウも同じ戦略を採用し、表翅と裏翅で色彩が大きく異なります。表翅が目立つ色彩をしていますが、裏翅は地味な色彩をしているのです。このため翅を閉じていると隠蔽効果が高く、逆に翅を開き、表翅を急に見せる事で鳥を驚かせ、その隙に逃げてしまいます。動物の目玉模様はこの戦略の延長にあると考えられています。クジャクチョウも表翅に目玉模様をもち、裏翅は全体が黒い色をしています。止まっている時には翅を閉じ、黒くみえますが、急に翅を開き目玉模様を出して鳥を驚かせていると考えられています。
 コスタリカ原産の
メダマヤママユは静止している時には、翅を広げ、前翅で後翅の目玉模様を隠し枯れ葉に似せてカモフラージュしていますが、何かあると前翅を開き、後翅の目玉模様を見せます(また、そのまま擬死を起こします)。この目玉模様はタカやフクロウなど小鳥の捕食者の目玉にそっくりの模様をしています。ちなみに擬死は1つの生き残り戦略です。昆虫の代表的な捕食者であるカエル、トカゲ、ヘビやクモなどは視野の中の動く物しか攻撃しません。またこれらの生物は動かない個体が動き出すまで辛抱強く注視することはないため、動かない事が最善の策になります。また、動いていたものが突然静止する事で視野から消え、動きを追跡できなくなってしまう効果があります。このような虫の擬死を調べた結果では、逃げるのが下手な個体で良く発達するようです。
 またこのような擬死を起こす場合、硬直姿勢そのものを工夫し、つまみあげられたり飲み込まれにくい姿勢が採用される事も多いようです。ちなみにナナフシやミズカマキリなどは光の照射によっても擬死を起こします。擬死を起こす動物は非常に多く、昆虫以外の甲殻類(ダンゴムシ)、クモなどの節足動物に限らず、軟体動物(ヒョウモンダコ)、魚類(サメ、カワスズメ)、両生類(カエル)、爬虫類(ワニ)、鳥類(ニワトリ、ガチョウ)、哺乳類(リス、タヌキ)等、多様な動物でみられますが、一般的に活動的で、攻撃的な動物では擬死が起きにくいといわれ、トンボやスズメバチがこの代表例になっています。
 少し話が飛びますが、カマキリは特殊です。待ち伏せ型の捕食者で基本的に動く物体を餌として認識し、餌の検出機構もカエルと同じく動く物体のサイズを検出して捕獲を行います。但し、カマキリはサイズだけではなく縦や横な長さの動きの方向も検出しており、進行方向に長い物体に捕獲行動を起こします。カエルは動かない物体には反応しませんが、カマキリは餌物体が動かなくなると自分自身が動き(左右前後に頭部を移動させる)、物体の検出を行います。異なる位置から見る事で餌の検出をより確実に行い、この後、捕獲行動に移ります。
 南米のニセメダマガエルは尻(腿の付け根)に大きな目玉を2つもっています。敵に襲われると敵に背を見せ、肺を膨らませる事で尻を高く持ち上げ、目玉模様を誇示します。同時に目玉の周りにある腺から不快な分泌物を出します。
 また、鰭に目玉模様を持つ魚では、普段この鰭をたたんで目玉模様を隠し、急にひれを開いて目玉模様を出す事で捕食魚をびっくりさせています。
 一方、吃驚させるのとは異なりますが、オオヤマネコには瞼に目玉模様があります。眼を開けている時にはこの模様は見えませんが、眼を閉じるとこの目玉模様が見えるようになります。これは眼をとじている(眠っている)時にも眼を開けているように見せているといわれますが、その役割はまだハッキリしていないようです。


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