MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

4.動物の眼・視覚

動物のピンホール眼

イ)オウムガイ
 オウムガイはイカやタコと同じく軟体動物の頭足類に分類され、アンモナイトなどと同じ仲間です。浅海から深海まで垂直方向の移動に適応して生活しています。眼は窩眼ともいわれ、光が入射する瞳孔に当たる部分に開口部があります。開口部の反対側には、凹状の内側に光受容器が並んでおり、光が入射する方向が分かる機構になっています。カメラ雑誌でもよくとりあげられますが、ピンホールを用いた場合、明るい像を得るためにはピンホールを大きくし、鮮明なイメージを得るためにはピンホールを小さくする必要があります。オウムガイではピンホールを大きくする方向を採用したために像はぼやけたものになっているようです。これも深海まで移動できることのおつりでしょうか?

ロ)プラナリア(扁形動物)のピンホール眼
 プラナリアは再生力が強い動物で、小川の小石の裏などに生息しています。プラナリアの眼は2つあり、最も原始的な眼として知られています。レンズは存在せず、黒い色の色素細胞から作られた袋が暗箱となって感光性の細胞を取り囲んでいます。袋の一部に開口部があり、光が入射する穴になっているとともに視細胞がここから外に出ています。光は微絨毛で受容されます。微絨毛は稈体や錐体の外節に相当します。視細胞の数が少なく、像を認識する事は困難ですが入射光の方向はわかるようです。このようなピンホール眼はプラナリア以外に刺胞動物のクラゲにもあり、クラゲにはレンズ眼を持つアンドンクラゲと持たないミズクラゲ(16個の眼点がある)、両方をもつハコクラゲなどもいます。次に軟体動物に属しますが、特殊例としてホタテ貝の眼について紹介します。

ハ)ホタテ貝の眼
 ホタテ貝が属する二枚貝の多くは眼をもっていません。二枚貝の多くは水管に光を感ずる色素細胞をもっており、光の変化を感じて水管を引っ込ませています。このように水辺にいる貝類は光の急激な変化を感受して警戒行動をとるのです(ホタテ貝の天敵はヒトデですがエイなども上から襲うようです)。さてホタテ貝も一見して眼がない様に思っておられる方が多いと思いますが、実はホタテ貝は動物界でも眼の数が最も多い生物です。焼いておいしいホタテ貝のどこに眼があるのでしょう?食べる時に気が付きましたか? 実は“ヒモ”の部分、上下二枚の外套膜周辺部にズラリと1列に並んでいる黒い点状の部分が眼なのです。その
眼の数は合計60個〜120個にもなります。1つ1つの眼はレンズを備えており、レンズの背面近くに網膜があり、その外側に反射層を持っています。レンズを通った光は1度網膜を通過しますが、外側(眼底)の反射層が凹面鏡のように光を反射し、反射された光が網膜の内側で結像する方式になっています。この反射層はグアニンでできています。
 ホタテ貝の
網膜は2になっており、レンズの反対側の視細胞でイメージを捉えますが、レンズ側の視細胞は光量をもとに感度調節をおこなっています。網膜には各層、5千個程度の視細胞があります。なお各眼の視野は100度もあるようです。これだけの視野をもち、何故多数の眼が必要なのかは定かではありません。

 さて今まで紹介してきたカメラ眼やピンホール眼は全て網膜が凹形状になっていました。レンズの有無や形状に差異はありましたが、すべて眼球の内側に網膜が形成されています。このような方式に対し、凸形状に網膜(視細胞)層が形成されるタイプの眼があります。代表的なのは特に節足動物や昆虫の複眼ですが、複眼について説明する前に、まず原始的なゴカイの眼から紹介しましょう。

ゴカイ(環形動物)の眼

 ゴカイは釣りの餌として良く知られています。ゴカイの眼はレンズをもたず、色素細胞を持った管の集合体です。管の色素細胞は、隣接管からの光も受光します。このような管状眼が進化し、レンズがつく事で節足動物の複眼ができあがったと考えられています。なお、ウキゴカイではカメラ眼をもっていますが、網膜や視神経の並びは頭足類と同じで、脊椎動物と異なります。



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