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1.太陽の恵みとリスク

太陽光のリスク:紫外線
 生物は様々な紫外線防止物質を開発してきた。

太陽の誕生は地球より若干古く、約46億年前と考えられています。太陽が星間ガスから収縮してできる際に、原始太陽を円盤状に取り囲むガスから太陽系の各天体が誕生したのです。それ以来46億年もの間、太陽は光り続けてきました。当初はガスの収縮にともない密度が高くなる事で温度が上昇して原始太陽となりましたが、その後、中心部で水素の核融合反応が起こり、光り続けられるようになりました。現在、太陽の寿命は100億年と考えられており、あと54億年は継続して光り続ける事になります。

ところで太陽が発生する光(表面放射)にはさまざまな波長成分が含まれています。γ線から非常に波長の短い]線、これより波長の長い紫外線、現在人が見ている可視光線、またより波長の長い赤外線や遠赤外線、更に電波までと実に広い範囲にまたがっています。これらの光と生物について考えてみると、波長の短い、高いエネルギーのγ線、X線や紫外線は生物にとって有害です。高いエネルギーの光がDNAに照射されると傷ついてしまい、死亡や、突然変異、また生存上有害な影響を受けてしまいます。このような波長の光がある限り、生物は発生できない、または発生してもすぐに滅亡してしまうのです。幸い、地球では金属鉄が中心に集まる事で核ができ、磁場(地磁気)が発生しました。この磁場がバリアーとなりγ線やX線などの高エネルギーの宇宙線は地表に届かなくなりました。

一方、紫外線に対しては水が唯一の防御手段です。深い水中には紫外線は届きません。従って、生物は長く海の水中から離れる事はできませんでしたが、酸素発生型光合成が開始される事で、大気の酸素濃度が上昇し、オゾン層が形成されました。オゾン層によりようやく紫外線の一部がさえぎられるようになりました。紫外線は波長域により、UV-C(200-280nm)、UV-B(280-320nm)とUV-A(320-400nm)の3種類に分けられます。UV-Aは比較的生物には無害ですが、UV-Bは現在も日焼けの原因となり、皮膚や目に障害をおこします。UV-Cがもっとも生物に危険ですが、大気中の酸素はUV-Cを吸収してオゾンとなります。また逆にオゾンはUV-Bを吸収して酸素に戻ります。オゾン層はこのような反応で平衡を保ち、UV-CやUV-Bが地表に届くのを防いでいます。現在では地表に降り注いでいる太陽光はおおざっぱに赤外光が60%、可視光が37%、紫外光が3%程度です。このようにオゾン層が形成された事で紫外光は大幅に低減されていますが、生物にとって、紫外線対策は今でも非常に重要な課題で、生物は体表面に紫外線防止対策を施しています。ちなみにこのような紫外線防止物質として陸上植物のもつフラボノイドや動物のメラニンが有名ですが、海の浅瀬でも紫外線が多く、シアノバクテリア、紅藻、サンゴやクラゲなどでは330nmの紫外線を高効率に吸収するMAA(マイコスポリン様アミノ酸)という物質をもっています。このMAAは吸収されたエネルギーの99.9%以上を熱として放出し、紫外線から身を守っています。また陸上植物はフラボノイド以外にもサリチル酸やシナピン酸など実に多くの防御物質をもっています。植物は動物と比べ動いて太陽光を避けることができないことがこのような背景にあるように思われます。


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