脊椎動物の桿体視細胞と錘体視細胞では光受容部位が絨毛に由来する絨毛型光受容細胞であり、一方、昆虫やイカ・タコなどの軟体動物を代表とする無脊椎動物では、細胞膜から直接生じた多数の微絨毛が集まって光受容部位を形成する感桿型光受容細胞をもっています。絨毛型光受容細胞は通常、光により過分極しますが、感桿型光受容細胞は逆に脱分極をおこすのです。このような差異で電位が逆になります。
この2つのタイプの光受容細胞は新口・旧口動物各々の系統でみられる事から、一時は別々に進化してきたとも考えられました。しかし現在では、動物の祖先生物が新口動物と旧口動物に分岐する以前に、この両方のタイプの細胞が既に存在していたと考えられています。ちなみに先に説明したホタテガイや脊椎・無脊椎動物の共通祖先に近い特徴を持つとされるゴカイでも両方のタイプが見つかっています。また脊椎動物では感桿型の形態をもつ光受容細胞は一切みつかっていませんが、網膜に存在する光感受性の神経節細胞がこの感桿型光受容細胞が変化したものと考えられています。
一方、ロドプシンも進化により多様化しています。脊椎動物の視細胞にあるロドプシンは活性化すると過分極をおこし、一度、光を吸収するとレチナールが蛋白質部分であるオプシンから離れ、ロドプシンは分解してしまいます。他方、無脊椎動物のロドプシンは脱分極しますが、一度光を吸収した産物は分解せず、安定しており、次に光を吸収する事で基の状態に戻るという性質をもっています。
これらロドプシンは細胞膜を7回貫通する構造をもつ特徴をもっており、G蛋白質共役型受容体といわれ、光によりG蛋白質を活性化します。なお他に嗅覚や味覚など、臭いや化学物質により活性化する物質も同じ仲間です。
ロドプシンは現在、8種類に分類されており、脊椎動物はGt(トランスデューシン)タイプ、昆虫や軟体動物はGqタイプのとして分類されています。ちなみにヒドラやイソギンチャクはGs、ホタテやナメクジウオはGoという別のタイプのロドプシンです。
なお、これらロドプシンの中で脊椎動物のロドプシンのみが光により分解、褪色するという特徴があります(他は昆虫のロドプシンのように2回光に当たりもとにもどる)。これは脊椎動物のロドプシンと他のロドプシンでは光による構造変化の程度が異なる事に由来しています。脊椎動物のロドプシンではG蛋白質の構造変化が他に比べ数十倍大きく、発色団であるレチナールとの結合が弱くなるのです。これにはたった1つのアミノ酸部位での変化が関係しており、この変化(進化)により脊椎動物は高感度の視覚を手にいれたともいえます。