MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

4.動物の眼・視覚

両性類の眼

 両性類の眼も眼窩に固定されています。但し、カエルでは眼窩は頭骨で取り囲まれていないため、眼を内部に引っ込める事が可能です。ジャンプしたり、水に飛び込む時には眼を引っ込めて保護しています。両性類では後述のサメと同じく、普段は遠方を見るためにレンズが固定されており、近くを見る場合にはレンズの腹側縁に付着している牽出(牽引)筋によりレンズが前方に移動します。カエルの場合は焦点合わせを、このようにレンズ位置を前後に動かすとともに、レンズの形状変化も併せて行っています。遠方を見る場合にはレンズは扁平で、近くを見る場合には丸くなります。またカエルの眼には中心窩がなく、また後述の桿体と錐体視細胞は均一に分布しており、網膜の場所による違いはほとんどみられません。
 またカエルの特徴として、網膜内部にある神経節細胞で視覚情報の処理を行っている事が大きな特徴です。つまり、情報処理をソフトではなくハードウェアで実施しているのです。カエルの眼では
網膜の神経節細胞は5種類あります。この中で特に
       @    直線部のエッジ
       A    カーブ
       B    コントラスト変化
       C    局所的な明るさの変化
の4種類を各々検出する神経節細胞があり、これらは特に「動き」があった時に反応します。また残りの1種は暗闇に反応する神経節細胞です。このようにこれら4つの情報を網膜で抽出し、これを脳(中脳の一部:上丘)に伝えているのです。これらの情報により、見ている対象を背景と分け、対象のサイズを測り、その動きを捉え、
       ○ 静止しているものには反応しない
       ○ 小さな動く対象には捕食行動を起こす
       ○  大きな動くものからは逃避する
という行動を“反射的”に起こしています。カエルは通常、小さく
、“動いている”昆虫やクモしか食べませんが、じっと待ちながら、眼でこのような餌を待っているのです。従って、餌に関する重要な信号処理は網膜で行われ、これが脳に伝わる事になります。
 またカエルは変温動物です。待つ事でエネルギー消費を押さえているとの説もあります。ちなみに繁殖期間中でさえ、雄が消費したエネルギーの大部分が鳴き声に使われているとの報告があります。但し、カエルを捕食するヘビなども動く動物のみを狙います。このような関連も“待つ”というスタイルと関係しているとも思われます。
 両生類の瞳は菱形、ハート型など様々のものがあります。イモリやサンショウウオ類では瞳孔は丸い形状をしていますが、垂直の瞳孔は夜行性の動物に見られ、水平の瞳孔は昼行性の種で一般的です。ちなみに代表的なカエルであるトノサマガエルでは水平に長い楕円形をしています。ちなみに、あるカエルでは2種の桿体視物質と、単錐体と複錐体で異なる3つの吸収ピークを持つ錐体視物質が確認されています(単錐体、複錐体については後述)。
 カエルではまぶたは上下にありますが、上のまぶたは厚くうごきません。下まぶたは薄く、下端は更に薄く、可動の透明な
瞬膜になっており、水中やジャンプする特に眼球を覆い保護します。 なおイモリは網膜を失っても再生する能力を持っています(色素上皮細胞より再生)。

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