MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

3.動物の体色・斑紋

両性類

 両生類の皮膚は薄く、爬虫類の鱗のような防御機能をもつ外層をもっていません(両性類で鱗をもつのは蛇形類(ダケイルイ)と言われる種類の一部で、背と腹に円形の鱗がありますが、鱗は各々重なり合っていません)。代わりに皮膚はいつも湿っており、この状態を維持するために粘液を分泌していますが、皮膚に有毒物質を分泌している種もあります。また多くの両生類は皮膚呼吸をしています。
 両性類の皮膚も表皮層と真皮層から構成され、基本として真皮層に色素胞が存在する点は爬虫類を同じです。また、粘液や有毒物質も真皮層から分泌されています。
両生類も脱皮しますが、表皮の角質化は爬虫類ほど進んでいないために脱皮した皮は薄く、すぐに食べてしまう事が多いため、見かける機会は多くありません。カエルは手足で皮をこすってはがし、その後、皮を食べてしまいます。また両生類では、その種に特有の体色パターンは幼生期には見られず、変態後に現れる事が特徴です。また背側と腹側では体色パターンが異なり、背側には色々な色彩や斑紋などがありますが、腹側は白など、一様な色を示すものが多く見られます。両生類の色素胞は幼生の時には各色素胞がそれぞれ並列に並んでいますが、変態を境に、爬虫類のように上から黄色素胞、赤色素胞、虹色素胞、黒色素胞の順に重なって並びます。またこれらがひとつのユニットとして色彩を形成するケースもあります。但し、このような場合、爬虫類の色素細胞では、最下層の黒色素胞がその上に位置する他のすべての色素胞を取り囲む事ができますが、両性類では黒色素胞は、虹色素胞のみを取り囲み、黄色素胞は囲みません。また両生類では表皮にも色素細胞(主に黒色素胞)が分布しており、皮膚の黒斑を強調しています。なお両生類のメラニンはユーメラニンであり、フェオメラニンはありません。ちなみにアカハライモリの腹側の赤い色は、真皮に赤色素胞、その下に虹色素胞が重なって出ています。ニホンアカガエルの背中の赤い色の場合には真皮に黄色素胞、その下に赤色素胞が重なる事で出ていますが、トノサマガエルの背中の緑や茶色は黄色色素胞、虹色素胞、黒色素胞がユニットとなって出ており、緑色では黒色素が最下層にいて色には影響しませんが、茶色ではこの黒色素が上の虹色素胞を囲んでしまい、結局、黒色と黄色の組み合わせで茶色の体色となります。

 
上記での記号は、X:ザンソフォア、I:イリドフォア、M:メラノフォアの略です。

 また一部のカエル(シュレーゲルアオガエル)では黒色素胞が退化し、代わりに黄色素胞に由来する紫色素胞が存在しています。なお腹の白い両生類は、腹の真皮の虹色素胞で、光を乱反射して白い色を出しています。
 両性類は基本的に動きが鈍く、餌取りも静かに餌がくるのを待つ生活スタイルをとっています。従って、目立たない事が基本であり、
体色も保護色が基本です。多くのカエルでは地上性の種では褐色が基本ですが、樹上性の種では告F系統の体色が基本になります。しかし中には虹色素胞がなく黄色の体色をする場合や、黒色素胞を持たない、白い色のアルビノの個体も時々みかけられます。なお、蛙はオタマジャクシから成長しますが、オタマジャクシは既に述べたように魚類と基本的に同じ皮膚構造をしています。
 一方、毒をもっている事を警告するために赤や黄色〜オレンジ色の非常に鮮やかな体色を背や腹に持つ両性類(特にイモリやサンショウウオ)もいます。腹に赤い模様をもつアカハライモリもこの例です。アカハライモリでは背側では黒色素胞が他の色素胞を覆っていますが、腹側では黒色素胞は収縮し、赤色素胞のカロチノイドの色が出ます。また虹色素胞が黄赤色素胞と黒色素胞の下にあり、他の色素胞を透過した光が虹色素胞の反射板で再度外側に反射されます。これにより色をより鮮やかに見せています。なお幼体期にはこの虹色素胞はなく、変態後の生体で虹色素胞が出てきます。また
両性類の黄・赤色素胞は、幼体期と変態後で色素組成が変化するのが一般的です。
 多くのカエルでは背側は高竓倹Fをしていますが、スジ模様も多く見られます。これは背面から見た時に体の
輪郭を分断し隠す効果と関係します(後述)。
 なお眼から入る環境情報はカエルでは脳下垂体に伝わり、脳下垂体から分泌されるホルモンが血液に入り皮膚に伝えられる事で体色が変化します。従って体色を変えるには数分時間が必要です。


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