MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

4.動物の眼・視覚

視覚による生活V

ハ)頭足類
 イカ同士は[良い目]で、互いに認識し、連絡し合うようです。ホタルイカの発光なども仲間同志のシグナルと思われます。もっとも発光の一番の目的は、自分が現在いるところの照度と発光の強さを同調させて自分の身を隠すこと、また強力閃光で捕食相手の目くらましをすることですが、ホタルイカ類のごく近似種同志でも発光器の配列、種類の組み合わせや数が異なるので、同種認識のシグナルであることがうなずけます。 体色変化によるボディランゲージも目を通じての通信手段と考えられています。しかしイカの目は色を識別できず、明暗のコントラストを認識していると考えられています。またイカ・タコでは単純図形の認識ができる事が確認され、水平・垂直の2つの要素をもとに図形の認識をおこなっているようです。またタコでは触覚でも対象を区別できる事が分かっています。
ニ)魚類
 海洋の表層から中層で生活するイワシ、アジ、マグロなどの大多数の魚は稚魚期以降のほとんどを群れで過ごします。群れでは、魚同士の距離はほぼ体長の程度が標準で、この距離を視覚と測線感覚で計り、保っています。またシマアジは視覚により同種個体を認識しますが、同種がいない場合には形や色が似ている種類の群れを見つけてそこに加わり、かつこの群れの魚体に合わせて体色や模様を変化させます。群れる事で、捕食者が特定の魚に狙いをつける事を困難にし、さらに沿岸で群れる魚では体に縞模様をつける事で体の輪郭像を分断し、この効果をより有効にしています(後述)。但し補食者も群れる場合があり、また群れにつっこんでくる魚種(マグロなど)も存在し、このような捕食者に対してはこの戦略は効きません。
 また魚類でも視覚を餌や繁殖に利用する事にも用いられています。グッピーでは紫外色が配偶者選択に役立てられており、またプランクトンなどの餌を探すのにも紫外光が使われています。プランクトンを餌とする魚の多くは、紫外線を視覚で捉えることができ、紫外線が当たった動物性プランクトンは黒く見え、水中で目立つとの事です。
 またスズメダイなど珊瑚礁の浅い海で生息し群れをなす仲間では
UVの反射光が仲間とのコミュニケーションに使われているようです。一方、捕食に当たり、餌のカモフラージュ戦略の裏をかく魚がいます。水深500m以下の深海に住むホウキボシエソという魚は眼の下に発光器をもち、餌を探す時に赤い光を発光させます。深海では自然光としては青い光しか無く、他の魚には赤い光は見えません。他の魚は上方からの青い光を遮る影をもとに餌を探しますが、この魚は赤い光(従ってあまり遠くには届きませんが)で周囲を探索します。ホウキボシエソは視物質として青色光と赤色光を受光するものを両方もっており、対象から反射してきた赤い光を赤色光受容視物質で感受すると、そのエネルギーを青色光受容視物質に伝える事で、赤い光を青い光として見る事ができます。これにより赤い体色を持ち通常であれば深海では目立たないはずの周囲の魚を、捕食者が探索している事に気づかれないで、捕捉できるのです。またこの時用いられている赤色光を感受する物質は、緑色硫黄細菌の光合成色素(クロロフィルに似た物質)に由来しています。これら細菌を小さなプランクトンが食べ、このプランクトンがカイアシ類に食べられるという食物連鎖を通してホウキボシエソに蓄えられたのです。


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