MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

4.動物の眼・視覚

視物質の種類

 生物で使用されている視覚に関与する物質は、現在大きく以下の4種類にまとめられています。

 @脊椎動物の視細胞に含まれる視物質、A無脊椎動物の視細胞に含まれる視物質、Bホタテガイやナメクジウオに見いだされ、脊椎動物には存在しない視物質、Cヒドラやイソギンチャクなどの刺胞(二胚葉)動物の光受容物質です。この他にも頭頂眼や松果体で働く視物質やメラノプシン、視覚機能には直接関与しない酵素類等、多くの種類があり、視物質の仲間は2000種類以上見つかっています。視物質は視覚だけではなく、生物の生体リズムにも関与しているのです。
 @のグループは桿体細胞に含まれる明暗(薄明)視に関与するロドプシンのグループと、色覚に関与し錘体に含まれる4種類の視物質、紫(S),青(M1),香iM2),赤(L)グループに分けられます。つまり、脊椎動物はもともと4色が見える機能をもっているのです。
 一方、Aのグループでは吸収する光の波長はさまざまです。昆虫類では紫外線吸収型、青吸収型、長波長吸収型の3種類のグループ(グループであって3色という意味ではありません)に分けられています。ここで面白い事に、脊椎動物のメラノプシン(松果体や網膜神経節細胞に存在し、生体リズムに関与)は無脊椎動物のこの視物質と同じグループに属しているのです。ヒドラやイソギンチャク、クラゲなどはヒトや昆虫などの三胚葉生物と異なり二胚葉生物です。このグループでも数十種以上の視物質が見つかっています。
 脊椎動物と無脊椎動物では使っている視物質のグループが違っていますが、分子生物学での分析などから、生物の視物質は約7億年前の新口と旧口動物が分岐する前に1つの祖先から多様化したと考えられています。脊椎動物と無脊椎動物が7億年前 に分岐して以降、それぞれ独立して視物質を多様化させてきたといえます。最初の祖先動物から分かれた脊椎動物の祖先はまず短波長(青)と長波長(赤、香jの2つの視物質グループを開発しました。次に短波長のグループから紫(S)、青(M1)、香iM2)と白黒の明暗を感受するロドプシンの4つの視物質を開発しました。また長波長のグループから赤(L)グループが生まれたのです。白黒のロドプシンが生じたのは遅く、約4億年前と思われます。このように、脊椎動物では約5億年以上前に存在した共通祖先が前記の4種類の錘体視物質を既にもっていたのです。また、まず色の視覚が先にでき、その後、白黒の視覚ができた事になります。動物が陸上に上陸する4億年以上も前にこのような色視覚が出来ていた事は、深海から光の豊富な浅い海に住むようになってから視覚ができた事を暗示しているように思われます。また陸に上陸した動物に、最初から色感覚があった事は、恐竜なども色を見る能力が基本的に備わっていた事を暗示させます。また逆に色視覚が最初にできた事は、最初の脊椎動物は昼行性である事も暗示しています。


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