MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

4.動物の視覚

視覚・バイオミネラリゼーション

 20億年前頃には既に藍藻類が出現していましたが、オゾン層形成の少しまえ、約8億年前に緑藻が出現します。この緑藻類は後に陸上植物へと大きく進化する祖先です。一方、5億9千万〜5億5400万年前に骨格を持たない動物群が登場します(エディアカラ動物群)。その後、5億5400万年〜5500万年前にかの有名なカンブリア紀の大爆発があり、生物は一挙に多様化しました。この時点前後で起きた大きな事としては、@バイオミネラリゼーションと言い、生物が体組織に鉱物を取り込みはじめたことが第一点。また第二の点として、この時点までにA視覚が獲得されたことが非常に大きな変化です。

 バイオミネラリゼーションにより生物は堅い組織をもてるようになりましたが、動物に最も多く用いられているのはカルシウム(Caです。例えば、現在の甲殻類(海老やカニ)もキチン質に炭酸カルシウムを取り込むことで堅い殻を保持しています。また脱皮する場合にもこのカルシウムを胃に(胃石として)回収して再利用しています。また、動物の内耳(膜迷路)で平衡感覚を保つのに使われている耳石も炭酸カルシウムからできています。

リン(Pもリン酸カルシウムとして我々の材料になっています。カルシウムは海水中にありますが、リンは植物プランクトンから得る必要があります。しかし、植物プランクトンは季節により存在量が異なり、いつでも得られる訳ではありません。リンはATPなど生物の活動に必要な物質の構成成分であるため、当初はリン不足等に備えた備蓄をしていたものが身体の構造物である“骨”として、当初と違う形で利用されたと考えられています。この他にケイ素(Siも海綿動物のガラス海綿の骨針や爪を堅くするのに使われています。また植物のイネやトクサではケイ酸のような無機物を細胞膜壁に集積し、体を支える補強材料としています。このように丈夫な骨格を動物が保持できるようになったのはこの時代以降です(従って、脊椎動物の祖先もこの時期に由来する事になります)。また面白い事に、生命発生の場になったのではないかと考えられている熱水噴出孔の周辺で発見された巻き貝(スケーリーフット)の中には、硫化鉄を鱗や殻表面にコーティングしている種が見つかっています。さらに、ハトなどの鳥やイルカの頭部にも磁気ナビゲーションとして、小さな磁石が地磁気検出に使われています。この他、ミツバチの腹部、や細菌(走磁性細菌)などでも生物磁石が見つかっており、これらは天然の磁鉄鉱と考えられています。

 一方、視覚の獲得は、単に明るさを認識するセンサーとしての光受容器の獲得という比較的受け身の段階から、周りの状況により自らの行動を積極的に決める“判断”を行う脳の働きと密接に関連した変化に結びつきます。従って、視覚の獲得という事は、より積極的に、餌確保・敵からの逃避や同種族とのコミュニケーションを行う様にその生物活動が大きく変わる事を意味しますまさに「食う、食われない、子を残す」という生物の行動パターンがこの時期に端を発しているとも言えるのではないでしょうか?その意味で、この時期から生物の複雑な生態系が確立されはじめたと思われます。実際、カンブリア紀の生物化石からは他の生物に噛まれた後と思われるものが見つかっています。なお、通常、目のレンズはタンパク質からできていますが、三葉虫の複眼レンズは方解石(炭酸カルシウム)から作られていました。


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