MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

4.動物の眼・視覚

視覚情報処理:昆虫2

ショウジョウバエやイエバエでは複眼の各個眼には8つの視細胞があり、R7,R8という2つの視細胞の受容部が感桿中央部に上下に縦にならび、その周りをR1〜R6の6つの視細胞の受容部が囲む配置になっています。

           (ハエの視神経の接続例)  


 これら8つの視細胞の光受容部(感桿分体)は互いに接する事なく並んでいます。個眼の周辺視に関与する6つの視細胞(R1〜R6)の軸索はラミナに接続されていますが、中心視に関与する2つの視細胞(R7、R8)の軸索はラミナを素通りしメダラに接続されています。周辺視に関与する細胞は広範囲の波長の光を受容し緑色に最大感度を示す1種類の視物資しかもたない事から
、R1〜R6は物体の動き検出に関係し、中心視に関与する視細胞R7,R8は同一の光軸上にあり、R7とR8は異なる視物質の組み合わせ(紫外+青:pale個眼、紫外+緑:yellow個眼)をもつ事から、色検出に関係していると考えられています。なおpale個眼とyellow個眼は複眼内にランダムに分布していますが、その個数は3:7になっています。この他に既に述べた偏光を検出する個眼(DRA)ももっています。またハエのロビュラ複合体では複眼面の画像の流れに応答するオプティカルフロー検出ニューロンが60個ほど見つかっています。
 ミツバチの場合、複眼の各個眼は9つの視細胞から構成され、R1〜R8の8つの視細胞が隣接して感桿部を形成し、残りの1つの視細胞R9は感桿部の最も下、基底膜の上に存在してR7に代わって同じ位置に受容部を出しています。ミツバチではR1とR5が紫外光を、R2,R4,R6,R8が緑光を、R3,R7が青い光を感ずる視物質をもっています。なおマルハナバチやタバコスズメガ、ヒメアカタテハの複眼もミツバチと同じ構造をしているようです。またミツバチの場合もメダラに軸索を伸ばしている視細胞が確認されており、これは紫外線を感ずるR1,R5であると言われています。
 他方、チョウ類では視細胞の分布状態はハエやミツバチとは異なっています。アゲハチョウには、9つの視細胞があり、個眼の感桿上部にはR1〜R4、下部にはR5〜R8の4つが並び、最下部にR9が存在しています。また既に述べたように、視細胞の感桿周囲には種に特有の色素があり色フィルターとして働いています
 アゲハチョウではR3〜R8の6つの軸索はラミナに接続されここで終末していますが、残りのR1,R2,R9の軸索はラミナを経てメダラまで軸索を伸ばしている事が分かっています。アゲハチョウの場合、R1,R2の軸索はR5〜R8の軸索と結合していますが、R3,R4の軸索はこれらとは結合していません。またR3,R4は全ての個眼で緑光受容細胞である事から、R3、R4は像を認識するの空間分解能力と関係していると関係していると考えられています。但し視覚情報処理についての詳細はまだ研究が進められている途上です。
 またバッタではロビュラに動きの方向に関係なく黒い小物体が動けば激しくスパイクを出す細胞がみつかっています。但しこのスパイクを出す細胞は、繰り返して起こる刺激に対しては“慣れ”てしまい、数回で応答が小さくなってしまうようです。
 なお、チョウ類では視葉や前大脳に光の波長を選択的に抽出するcolor fiber があり、特定波長に反応するとともに物体の運動に反応する事で詳細な色情報を抽出しています。
 また、メダラ以降の神経網では視覚情報の特徴抽出が行われ、動物の摂食、交尾、攻撃や逃避などの行動情報として使われています。ちなみに、伊勢エビの仲間では運動情報を抽出するとともに運動していた物体が静止した時に反応するニューロン、バッタの仲間ではコントラストのある長い物体の運動方向を抽出するニューロンが、またハエでは運動方向のみならず運動物体の縞模様の方向を抽出するなど種特有の特徴抽出が行われています。またミツバチでも大まかな図形のパターンや線分の傾きなどが識別でき、人間と同じような錯視を示す事が確認されています。またこれら視覚情報は視覚刺激以外の音などの刺激とも統合されて昆虫の行動に反映される事は当然のことです。
 なお。上記では説明を簡単にするために、各個眼の視細胞を同一のように説明してきましたが、各個眼はいくつかのタイプに分かれ、同じ番号の視細胞でもそれぞれタイプにより別の視物質をもつ事があります。
 昆虫の他にイカやタコなどの頭足類も眼球の外に視葉がありこれが脳につながっています。また頭足類の視葉には双極細胞、アマクリン細胞(無軸索細胞)、水平細胞、神経節細胞がありこれらで視細胞からの情報を一部処理しています。



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