動物の体色については、個別に後述する予定ですが、ここでは色素細胞を中心に概要をまとめてみます。
皮膚は良く知られているように、表皮(基底膜を含む)と真皮から構成されています。表皮は外胚葉、真皮は中胚葉から発生します。体色は、外胚葉に由来する表皮、中胚葉に由来する真皮と色素の3つで基本が決まる事になります。それでは皮膚の色を発現させる色素はどこから発生するのでしょうか?
脊椎動物では受精卵が成熟し、動物の体が形成されますが、まず頭と尾の軸が決定され、次に背腹や左右軸が決まります。また外胚葉に由来する表皮の下に中胚葉に由来する真皮と皮下組織が表皮を裏打ちし、筋肉や内臓などを保護してゆきます。
胚の発生初期に、背の部分の神経が通る神経管が管として閉じる時に、背側に現れる“神経冠(神経堤)”といわれる細胞集団の部分から、将来色素細胞になる芽細胞が出て来ます。神経管は脳を含む中枢神経系となりますが、神経冠細胞は中枢神経系の外で各種の神経系を形成し、その中に色素を形成する細胞も含まれているのです。神経冠細胞は、幾つかの経路(背側、腹側等)を通って体中に分布します。最終的な到達地点に着くと、色素をつくる細胞(色素細胞)として活動を行うのです。従って、細胞移動の仕方や定着が不均一になれば模様が出る事になります。なお、ブログに書きましたが、頭部では、この神経冠細胞は体幹の神経堤細胞よりも多量に発生し、エラや顎などの骨格を作ります。
神経細胞は樹状突起を出してこの突起をのばすことで神経を接続していますが、色素細胞、特に変温動物の色素細胞も樹状突起をもち、この色素細胞内にある色素顆粒が細胞中心に凝集したり、樹状突起の末端まで拡散したりする運動を行います。色素顆粒の凝集・拡散運動により色が変化する事になります。虹色素胞と白色素胞は区別されない場合もありますが、細胞内で反射小板の凝集・拡散などの運動が見られるものが白色素胞とされています。白色素胞にも樹状突起は見られますが、黒色素胞と比較すると突起は少数です。また虹色素胞は通常、樹状突起は発達しておらず、紡錘や箱形をしています。
なお色素細胞は黒色素胞が最初にでき、次に黄・赤色素胞、さらに虹、白色素胞ができるようです。哺乳類や鳥類では。色素芽細胞は外胚葉性中胚葉の神経冠から外周部の背側路を経由して体側表面全体に移動しますが、爬虫類・両生類・魚類などでは多くの色素芽細胞は体内の背腹路も移動して腹腔膜や体内臓器にも定着します。鳥類でもウコッケイは例外的にこの傾向が強いようです。
また脊椎動物では、虹色素胞以外の色素胞は背から腹側に向かって細胞数が減少し逆に虹色素胞の細胞数は腹側に多いという傾向があります。このため背側が黒く、腹側が明るくなります。これもカモフラージュに役立っているのですが、別途まとめて後述します。
脊椎動物と比較すると、無脊椎動物の体色については不明な点が数多く残っています。
無脊椎動物のイカやタコのような軟体動物でもこれらの色素細胞が存在していますが、節足動物では事情が異なります。節足動物は堅い外骨格をもっています。キチン質の堅い外骨格自体にも色がついているカニやエビ、表面のクチクラや真皮、体液に色素が存在し、これらの組み合わせで多彩な色を表現する昆虫類など体色の表現様式は多彩です。また甲殻類では多数の色素胞が集まった多色性の複合体も見られます。