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3.植物の色

植物色素のまとめ1

  以上、植物の体色の由来について述べて来ました。植物は光合成を開始して以来、陸上植物は告Fのクロロフィルを主体に、赤〜黄色のカロテノイド色素、また黄色〜青色のフラボノイド色素を主にに使用してきました。光合成では酸素という劇薬を用いる事もあり、カロテノイド系色素は光を集めるアンテナ色素として、また多すぎる光エネルギーを熱エネルギーに変える役目の他に、抗酸化の機能を持ち、活性酸素の抑制という重要な役目も果たしています。一方、フラボノイド色素は陸上植物のみに見られる色素であり、紫外線の吸収という植物の光に対する鎧ともいう重要な機能とともに、やはり抗酸化の機能をもっています。またフラボノイド系色素のアントシアニンを合成できないナデシコ科の植物ではベタレイン色素が代わりに用いられています。このベタレインも強力な抗酸化作用をもっています。ここで植物色素について少し整理してみましょう。

イ)クロロフィル色素
 クロロフィルは、光合成色素で告Fをしており、a,b,c,d等の種類があります。a型が最初に出来上がりましたが、現在、陸上植物ではクロロフィルaとクロロフィルbしか持ちません。クロロフィルは最も簡単なアミノ酸であるグリシンやグルタミン酸から合成されます。基本骨格は生物で重要な窒素を頂点にもつ五角形のピロールが4つ並んだテトラピロールが環状に並んだ構造(ポルフィリン)をしており、この環の中心にマグネシウムが位置しています(最近、中心に亜鉛をもつピンク色のものも見つかっています)。このポルフィリン環にはしっぽがついており、この部位により疎水性(親脂性)になっています。なお、動物のヘモグロビンもポルフィリン構造(但しヘモグロビンではマグネシウムではなく鉄です)をしています。
 生命誕生についてオパーリンが原始大気中で紫外線や放電により必要な構成物質が出来上がった、という説を出し、これを裏付ける実験が行われましたが、この改良実験を行う中で、特にCO2HCNとホルムアルデヒド等が存在する環境化では糖、脂肪酸、核酸塩基(アデニン、グアニン、シトシンとウラシル)の他にテトラピロールが自発的に作られる事も示されました。原始スープの中で誕生した生物(当然嫌気性生物です)が化学的な栄養源を食い尽くさない内に、光合成を行える様になった事は、それなりに必然だったのかもしれません。なお、興味深い事に、植物の緑色のクロロフィルと、動物の赤いヘモグロビンは、グリシンとコハク酸から、プロトポルフィリンの段階まで同じ生合成プロセスでつくれる事が示されています。

ロ)カロテノイド系色素
 カロテノイド系色素とクロロフィルは植物の光合成に必須の色素です。カロテノイドは太陽の光を吸収してクロロフィルにエネルギーを渡すアンテナの機能と、過剰な光エネルギーを逃がして細胞を守る機能を植物ではもっています。
 カロテノイド系色素は自然界には約150種ほど知られていますが、大きくカロテン類とキサントフィル類に大きく分かれます。これらの中には分子構造や機能がまだ解明されていないものが多くあります。
 コケ類以上の陸上植物や藻類、また菌類までカロテノイドの合成能力を保有していますが、動物にはカロテノイドの合成能力はなく、動物は植物を食す事でカロテノイドを利用しています。典型的なカロテノイドはにんじん中のα.β,γ、ζ-カロチンやトマトなどに含まれるリコピンがありますが、β-カロチンは常にクロロフィルと関連して存在しています。キサントフィルにはルテイン、ロドキサンチン、ゼアキサンチンなどがあります。全てのキサントフィルはカロチンの酸素誘導体です。カロテノイドは水には溶けず、植物では色素体に存在しています。特に人体ではカロテノイドは体内でビタミンAとして代謝されています。また脂溶性という事から、カロテノイドは細胞膜やミトコンドリア膜などの膜脂質を活性酸素から保護する生体内抗酸化剤として働いていると考えられています。カラテノイドのもつ共役二重結合の部位でラジカルを補足しています。
 またカロテノイドはテルペノイド(イソプレノイド)といわれる代謝物質の仲間でこの仲間には天然ゴムや樹脂、また病原微生物に対する各種の防護物質や昆虫や動物をおびきよせる誘因物質、逆に動物にとって有害で動物からの食害を防止する物質などが属しています。


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