動物の眼の解像力について調べた結果を示します。空間周波数(視覚1度当たり、見分けられる白黒の縞の本数)をみてみますと、鳥類のハヤブサが最も高い解像力を誇り、次に人間やタコ、その他の鳥類が続きます。他のほ乳類、両性類、魚類が次ぎに高い解像力を誇り、昆虫や貝類では解像力が低い事が分かります。逆にいえば、鳥などは遠くを見るための眼であり、昆虫は近くを見る眼といっても良いのかもしれません。
高い空から獲物を見分けるハヤブサでは必然的に解像力が高くないと餌が取れないのでしょう。一方、ハエトリグモの前中眼は昆虫の中でも非常に高い解像力を持つ眼をもち、30cm先も見えます。ハエトリグモの前中眼は例外的に解像力を高めるために特別な工夫が眼に施されているのです。参考のために、各種文献から集めた“視力”の値を下記表に示します。文献により値が異なる場合がありますのであくまでも相対比較イメージ値として考えてください。
動物 | 視力:解像力 | 動物 | 視力:解像力 |
昆虫 | 哺乳類 | ||
昼行性クモ | 0.05-0.06 | げっし類 | 0.03-0.04 |
イエバエ | 0.005-0.006 | ネコ | 0.2 |
セイヨウミツバチ | 0.009 | ヒト | 1 |
アゲハチョウ | 0.02 | コウモリ | 0.01-0.02 |
軟体動物 | 鳥類 | ||
タコ | 0.7 | タカ | 2-3 |
ホタテガイ | 0.004 | 魚類 | 一般に0.1-0.6 |
オウムガイ | 0.001 | カツオ | 0.2-0.4 |
タイ | 0.05-0.3 | ||
キンギョ | 0.04 | ||
カレイ | 0.08-0.09 |
ちなみにハヤブサなどは人間の視力の数倍、ネコは視力が0.2程度です。魚類は身体が成長するにつれ眼も大きくなり視力も変化します。大型のカツオやマグロでは0.4弱ですが、タイでは体長が短いと視力は0.05程度、体長が60cm程度で0.3程度のようです。なお昆虫の複眼では、アゲハチョウでは視力0.02、ショウジョウバエでは0.003程度と推定されています。またアゲハチョウの方がミツバチよりも視力は良いようです。
上記の表で、脊椎動物と無脊椎動物では視力の値に差がある事に気づかれる事と思います。この原因の1つには用いている視物質が両者で異なる事があります。脊椎動物のロドプシンは無脊椎動物のもつロドプシンよりも光の増幅率が高い(蛋白質の変形度合いが大きい)のです(後述)。