脊椎動物の大部分はこのような錐体と桿体細胞をもちますが、錐体のみをもつ動物や桿体のみをもつ動物もいます。例えば、錐体のみもつ動物としては昼行性のトカゲ、ヘビ(一部のへびでは両方もつものもいます)、齧歯類のリスなどが、また桿体のみもつ動物としては夜行性のムササビ(齧歯類)などの動物がいます。
また夜行性動物のように桿体優位の動物では網膜中心部に視細胞節が集中して分布しておらず、光感度は高い反面、視力が弱い傾向があります。また夜行性動物では光を多く取り入れるために眼自体が大きくなり、特にレンズと角膜など前眼部が大きくなっています。逆に、昼行性動物では光の入り過ぎをさけるために、前眼部が小さいという特徴があります。なお、鳥類は“鳥目”とよく言われていますが、これは錐体細胞に比べて桿体細胞が少ないためです。桿体が無い訳ではありません。
視細胞についても詳しくみて見ましょう。視細胞は、外節と内節から構成されています。稈体の外節は円盤が積み重なった形状をしています。この円盤は通常900〜1,000枚程度(カエルで約1,000枚、ウシでは約180枚)の枚数がありますが、この円盤を構成している上下の二重膜に光を受光する視物質が入っています。視物質は膜に埋め込まれていますが、この膜は通常の生体膜よりも柔らかく、流動性があるために視物質(ロドプシン分子)は比較的自由にブラウン運動をしていると考えられています。
この円盤はたえずつくられており、時々、何枚かが先端から脱落し、色素細胞上皮に取り込まれて消化されます。この脱落には24時間のリズムがあるようで、朝方、目覚める頃に生じているとの報告があります。人では10日から12日程度で、カエルでは2カ月程度ですべての円盤が入れ替わりますが、脱落円盤は色素上皮細胞に吸収されて視物質がリサイクルされる機構になっています。一方、内節には細胞核、ミトコンドリアなどがあり、通常の細胞と同じようになっていますが、視細胞に必要なタンパク質やエネルギー源のATPなどはこの内接部で合成され、外節と内節をつなぐ細い部分(結合絨毛)を通して外節に供給されています。また各種イオンもこの通路を通して輸送されています。なお発生学上からは、外節はこの結合絨毛が変形したものといわれています。
一方、錐体の外節は円錐形状をしています。稈体では円盤が積み重なっていましたが、錐体では独立した円盤にはなっていません。錐体の外節は、先細りの櫛を回転させた形状をしており、櫛の歯の上下の膜に視物質が不規則に入っています。なお錐体では桿体と異なり、外節部の脱落現象は起きません。
なお、脊椎動物で最も下等な無顎類のヤツメウナギには長短2種類の視細胞が見つかっています。ともに外接が折り畳み込まれた錐体のようになっていますが、短細胞にロドプシンが、また長細胞に赤感受性の視物質が含まれています。従って進化という観点から、短細胞は高等脊椎動物の桿体に、長細胞は錐体に対応していると考えられています。