MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

4.動物の眼・視覚

視細胞2

 錘体細胞は哺乳類ではほぼ1種類ですが、魚類(硬骨魚)・両性類・爬虫類・鳥類、また有袋類や単孔類では大小2つの細胞が対になる(双錐体または複錐体と言う)ケースがあります。つまり2つの錐体細胞がくっついた形をしているのです。魚類では全く等しい錐体が2つ接触した双錐体といわれる形態を、他の脊椎動物では主体と副体が緊密に接触した複錐体という形をとります。主体には油滴がなく副体に油滴があります。反面、主体にはグリコーゲンなどのエネルギーの貯蔵所であるパラボロイドがありますが、副体にはありません。これらの複錐体や双錐体は単一の錐体と共存していますが、その機能や役割についての詳細は不明です。また複錐体をもつ動物の中でも爬虫類は特に種により多様な視細胞をもっています。ワニは錐体や複錐体をもちますが、夜行性となったために桿体から双極細胞につながる部分の分岐が多くなっています(錐体のように)。昼行性のトカゲは錐体しかもちません。夜行性や地中性のトカゲ(ヤモリを除く)も錐体しかもちません。ヤモリは夜行性ですが、錐体が2つくっついて桿体状になった視細胞をもっています。またヘビでは地中性のへび、例えばメクラヘビには桿体しかありません。ボアなどでは錐体と桿体があり、その他のヘビには錐体、複錐体、桿体があります。カメも錐体、複錐体、桿体をもちます。海亀では稚亀が卵から孵った後、海に向かいますが、この時、海からの紫外線に誘因されて海の方向に向かう、といわれています(陸よりも海側からの紫外線が強い)。
 なお、前述のように、爬虫類のトカゲの視細胞には錘体細胞だけがあり、ロドプシンを持たず、夜には目が見えません。このようなトカゲから進化したと推定される夜行性のオオトカゲは、桿体をもっていますが、この視物質は
ロドプシンではなく錐体の視物質に属するものです。ヤモリも夜行性トカゲから分岐したと考えられており、ほとんどのヤモリは夜行性です。このヤモリの桿体視物質も錐体タイプのオプシンに由来しています。夜行性になってもロドプシンを失っているために錐体の視物質を利用し、視細胞が桿体化したものと考えられています。
 一方、
両生類のカエルでは432nm(緑桿体)、502nm(赤桿体)に吸収ピークをもつ2種の桿体視物質と、錐体視物質として単錐体で572nm、複錐体で572nmと502nmの吸収ピークを持つ錐体視物質が確認されています。なおカエルでは視物質のM2(緑)グループに相当するものはまだ見つかっていないようです。このカエルの緑桿体にはキンギョやニワトリの青感受性錐体視物質とよく似た視物質が存在しています。
 魚類の双錐体で面白いのはカサゴで、幼魚時代には海水表面にいますが、この時代は錐体中での複錐体比率は小さく、成魚になり水深数百mで生息するようになると双錐体の割合が高くなります。また魚類では、
深海魚では錘体がなく桿体のみ持つものが多くいます。このような深海魚の桿体外節は浅い海の魚の桿体外節よりも長く、かつその中の視物質濃度も高くなっています。桿体細胞層を複数もっている魚も見受けられます。また複数の桿体細胞を束ね、集めた信号を1本の視神経にまとめる事で感度をあげているケースもあります。なお、深海でも水深100-300mに棲む魚では桿体と錐体をもつ種が多くなります。但し、この錐体は双錐体です。浅い海に住む魚では双錐体と単錐体の両方をもちますが、面白い事に、この異なる錐体が規則的にモザイク状に配列します。魚種により双錐体の割合や配列状況が異なりますが、メダカや金魚などでは錐体は四角のモザイクに、サケでも1年魚は赤と緑を受容する双錐体、青色を受容する中心単錐体、紫外線を受容するコーナ単錐体と4種類の錐体をもちます。これらの錐体もモザイク状に配列されています。ゼブラフィッシュやウグイでは錐体は列状に配列します。なおコイでは錐体はランダムに配列しています。このように魚類ではデジタルカメラのカラーイメージセンサーのようにカラーフィルターが規則的に配列する構造が既に実現されていたのです。但しこのようなきれいな配列や双錐体は人間にはみられません。またゼブラフィッシュでは網膜の中央から背側の領域には短波長感受性の視物質が、中央から腹側の領域では長波長感受性の視物質が多く分布しています。これは浅い水中での光環境は上と下や横からの光では異なるスペクトル分布をする事と関連していると思われますが、この分布と生態・行動との関係はまだ不明のようです。
 また、
魚類の紫外線受容は餌となるプランクトンの探知と関係しています。ちなみにサケの2年魚では網膜腹部のコーナ単錐体が消失し紫外光の受容能力が低下します。なお、サケ成魚では、眼のレンズは紫外光を通しません(角膜は通す)。なお、他にもコイ、コバンザメ、ヒラメ、ゴマサバ、ウグイなどは紫外線を感受しますがマダイ。クロダイなどは紫外線が感受できないようです。



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