MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

4.動物の眼・視覚

視細胞3

さらに魚類では眼の瞳の大きさは明るさによらず一定です。虹彩の絞りは常に全開状態になっています。これは空中よりも水中は暗いためと考えられています。このような状況から、明暗による感度調節は網膜の視細胞によって行われています。明るい所では錘体が前面、外限界膜に(色素上皮層から離れる方向に)移動し、ものの細部や色を見分け、暗い所では錐体は逆に移動し、桿体が前面、外限界膜側に移動し弱い光の中で機能を発揮します。この時、暗順応時にはメラニン色素は色素上皮細胞の基部に集まり、反射板(タペータム)が前面解放されますが、明順応時にはメラニン色素は色素上皮細胞の表層に集まり、反射板を覆います。
 他方、
サメやエイ類では桿体が優勢です(透明度の高いサンゴ礁などに棲むメジロザメや捕食のために視覚を利用しているホホジロザメでは錐体と桿体の両方がありますが、深海性のサメ類は桿体しかもちません)が、色素上皮細胞の発達が悪くメラニン色素をもっていません。また、タペータムは脈絡膜にあります。このためサメやエイでは、明るい環境では脈絡膜色素細胞が、脈絡膜タペータムを覆う事で明暗調整がなされています。なお深海性のサメは釣り上げた時にグアニンによるタペータムで眼がエメラルドグリーンに輝くといわれています。
 また、
爬虫類や鳥類では単一の錐体細胞や複錐体の片側(主錐体)の内節部分(ミトコンドリア層と外節の結合部下との間)に油滴があります。油滴は大部分の場合透明ですが、色がつく事があります。この場合、入射光は油滴を通った後に外節部で受容される事になり、油滴は色フィルターの機能を果たす事になります。視物質の受光波長と油滴のハイパスフィルター機能により視感度がシフトし多彩な色を感ずるのに役立っているといえるでしょう。この点だけを見ても鳥類にとって色情報が非常に大事である事を伺い事ができます。
 また油滴は球形をしている事から
集光機能ももちます。鳥類では中心部の錐体油滴は小さく、網膜周辺部の錐体油滴は大きくなり周辺部での集光に寄与しています。なお、桿体細胞には油滴はありません
 前述のように
油滴は通常無色ですが、カロテノイド色素により赤、黄色,緑色に着色される事があります。油滴については文献により色の分け方が異なります。例えば、鳥類の油滴については、権藤・安藤の文献では、赤、橙(オレンジ)、黄、PaleGreenの4種、他の文献では大きく6種類の油滴を持つとも分類されています。権藤・安藤の文献に従うと、フクロウなどの夜行性の鳥では無色で、複錐体の油滴はPaleGreenのみをもちます。またキングペンギンもPaleGreenのみと報告されています。昼行性の鳥では、基本的に4種ですが、濃い色ほどカロテノイド濃度が高いとの事です。また鳥類の油滴のサイズは直径が2〜5μm程度となっています。なお昼行性の鳥類の場合、4色の油滴の中ではPaleGreenの割合が多い様です。特にツバメ、ハシブトカラスやカササギでこの傾向が強く、ユーラシアスズメ、キジバト、コウノトリやセグロカモメでは黄・橙・赤の比率がPaleGreenよりも高くなっています。
 他の文献の報告を紹介すると、ニワトリの単一錐体で、透明、赤色、黄色、薄青色の油滴が確認されています。ちなみにハトは赤、オレンジ、黄色の3種の色をもち、カラスでは透明、青、緑、赤色の油滴があるとの事です。また権藤・安藤の報告と同じく、
鳥類では各色の油滴の密度は鳥の種類により異なります。カラスでは基本的に各色が同じ割合ですが、カワラバトでは網膜背側に赤色が、カツオドリでもかなりの赤色の油滴が見られますが、カモでは黄色の比率が高いようです。海鳥で明るい羽根をもつ鳥では赤・橙の油滴は全体の50〜60%程度あり、他方、暗色の羽根をもつ海鳥では主要な油滴はPaleGreenとの報告もあります。
 なお権藤・安藤によれば、赤や橙色の油滴の吸収曲線を調べると、カットオフ波長は、赤で580μm、黄色や橙は530μmで、これは種により変化しないとの事です。一方、PaleGreenのカットオフ波長は種毎に異なり、またPaleGreen油滴も種によって大小2種認められます。このようにPaleGreenの色の多様性がこのような色分類の混乱を招いている可能性があります。
 ちなみに、鳥類でのこのような
油滴の色分布の違いは、種による“食性や生活環境などによる差異”と考えられています。ちなみに権藤・安藤の文献によれば、同じペンギンでも、フンボルトペンギンは赤道付近の色彩の豊かな地域で生息し、4色の油滴をもっていますが、南極地方に棲息し、暗い海中で餌をとるキングペンギンはPaleGreenしか保有していないとの事です。
 爬虫類では油滴の色は赤〜黄色(夜行性や地中性トカゲでは油滴は透明)で、カメでは透明、オレンジ、黄色の3種類の色をもち、これがランダムに分布しています。なお
ヘビやワニには油滴はありません(ワニは夜行性で色覚はない)。またヘビでは油滴ではなく代わりにレンズが黄色をしています。



copyright©2012 Mark Pine MATSUNAWA all rights reserved.