MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

4.動物の眼・視覚

視細胞4

 さて、以上のように3回にわたって視細胞について紹介してきた訳ですが、視細胞はどのように進化してきたのでしょうか?

 プラナリアのピンホール眼の説明で微絨毛というものが出てきました。現在、
動物の光受容細胞は比較的長い絨毛や微絨毛という細かい毛がたくさん生えている上皮細胞(皮膚のように体や各器官を覆っている表皮の細胞)から進化したと考えられています。絨毛の表面積を増やす事で桿体や錘体の外節部を、また微絨毛を多く集めて感桿部を形成する現在の複雑な視細胞構造になったのです。実は視細胞に限らず、聴覚、味覚、嗅覚などのセンサーである感覚細胞は、細胞の先端から数本から数十本の毛が出ています。これらは有毛細胞といわれますが、この毛が特殊に発達して機械的刺激(聴覚)や化学的刺激(味覚、臭覚)を検出しているのです。
 ちなみにカタツムリの網膜の光受容細胞にも先端部に微絨毛がたくさん生えています(軟体動物や節足動物などの無脊椎動物の視細胞は細胞膜構造が変化した微絨毛があつまった構造をしています。)
 この
微絨毛は光の偏光を検知する機能とも関係しています。昆虫の感桿部の視細胞の微絨毛は直交した2方向に非常に規則正しく配列しています。視物質の配列に方向性がある事で、光の波が変化する振動方向の成分を検知しているのです(太陽の光は大気層で屈折されるときに直線偏光性が出る。観測者の頭上(天頂)と太陽を結ぶ線に垂直な偏光成分が多く成る。これを青空偏光ともよび、地球規模の現象ですが、これを動物は検出しています)。ミツバチやアリではこのような偏光を検知するのは紫外線を感知する視細胞がその役割を負っています。魚類ではティラピア、ニジマス、ブリでこの偏光受容が確認されています。コイやチダイでは偏光を検出できないようです。
 一方、
イカやタコの視細胞外節を網膜面と平行に切断すると、外節の横断面が碁盤の目のように非常に規則正しく並んでいる事が分かります。この外節側面には微絨毛が規則的に配列されており、面白い事にマダコでは、微絨毛は眼の瞳の収縮時のスリット方向と一致する配列と、それに直交する方向の2つが認められます。これは昆虫と同じく偏光の振動方向を検出しているのです。
 なお、以上の動物は直線偏光を検出していますが、ヤドカリの仲間である
シャコは円偏光を検出するというめずらしい動物である事がわかっています。


copyright©2012 Mark Pine MATSUNAWA all rights reserved.