MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

4.動物の眼・視覚

視覚情報処理経路

 さてそれでは視覚情報は眼からどのように脳に伝えられているのでしょうか?視神経は間脳底の前方部にある視交叉の所で脳に入ります。哺乳類の場合、ここからの主要な視覚系路は大きく2つに分かれます。

  @   膝状体系:網膜−外側膝状体−終脳(大脳皮質)
  1次視覚野、で視覚対象が何であるかを同定する経路

A   非膝状体系:網膜−上丘(視蓋)−視床枕−終脳(大脳皮質)
  2次視覚野、で視野のどこに対象物があるかを同定する経路

 間脳に入った視神経繊維が間脳の中にとどまらず上後方に達し、中脳天井の視蓋に達し、そこから終脳にゆくのがAの経路です。他方、大部分の視神経繊維は、間脳の主体である側壁をつくる視床から脇道(外側膝状体)を通って終脳(大脳皮質)にゆく@の経路を通っています。これらの2つの経路は哺乳類のみならず、鳥類、爬虫類、両性類、魚類で確認されていますが、これらは完全に独立した経路ではなく、互いに補い合っているのです。例えばスズキ型の現代的な硬骨魚(例えばカワハギ)ではAのみが存在し@は欠損していますが体表の紋様を変える事により、個体間の複雑なコミュ二ケ−ションが実現できています。またコイ科の魚もAの経路があるものの終脳に到達する@の明瞭な経路はもっていません。これはコイは泥水のような視覚が役に立たない環境にいたために環境適応して@の経路を失ったのではないかと考えられています。
 また原始的な硬骨魚であるチョウザメでは終脳に到達する2つの視覚系路が分離しておらず混在した状態にあります。これらから、現代的な硬骨魚では原始的な硬骨魚から進化する中で、@の経路をなんらかの理由で失ったと考えられているのです。
 鳥類では@Aの2つの経路が認められますが、特に視蓋に視覚認知機能が集中しており、視蓋で対象の認識と、対象の位置認識の機能を担っています。また視蓋細胞の30%は色彩刺激に反応するとの事で、色覚もここで処理されている可能性があります。従って、終脳の線状体では視覚に関わる記憶・判断・行動を結びつける総合的な制御機能があるのではないかと推定している学者がいますが、まだ結論は出ていません。
 哺乳類は@Aの両方がありますが、動物種によりその依存度が異なっています。ネコは@の経路に依存する度合いが大きく、シマリスはAに依存する度合いが大きくなっています。なお哺乳類の視蓋は4個の膨れた部位、4丘体の形をしており、前方の1対(上丘体)は視覚反射に関係した下等脊椎動物の視葉に相当し、後方の1対(下丘体)は両性類で発達した聴覚の二次中枢に相当する部位となります。ただし哺乳類ではこれらの機能は前述のように大部分、大脳皮質に移っています。



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