MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

3.動物の体色・斑紋

体色とコミュニケーション

ホ)昆虫

 一般に昆虫は、におい物質であるフェロモンにより誘引されますが、配偶者を見い出すには視覚も有用な手段として使用されています。主に蝶類を例に紹介します。

 アゲハチョウ(ナミアゲ)雄は雌を探すのに黒と黄色の縞模様を手がかりにしています。縞模様は雄雌では区別できないため、近寄って“さわって”雌雄を区別しています。またナミアゲハの産卵行動は緑色でのみ引き起こされます。
 キオビコノハというタテハチョウ科のチョウは黒褐色の翅表面に前後翅にわたる左右対称の黄色〜オレンジ色の太い帯をもっていますが、この帯が動く事で追飛行というなわばり行動を誘起する事が知られています。またシロオビアゲハのオスはメスを見つけるのに、翅の連続した7つの白い紋様を目印にしています。タテハチョウ科のミドリヒョウモンは翅の表面が黄褐(オレンジ)色で黒い斑点をもち、裏は全体が暗緑色で銀色のスジが入っています。またオスには、前翅の表側に3本のスジ(性標)が太くはっきり表れます。このチョウの雄は、表のオレンジ色と裏の暗色が交互にチカチカ見えるパターン変化に強い関心をもち、雌を探す手がかりにしています。但し、視覚だけでは同種の雌か否かは分からず、触覚の先で体にさわる事で同種か別種のヒョウモンチョウかを知るようです。
 このようにチョウでは翅の色・斑紋やその動きパターンなどが視覚刺激になっています。また、さわるのは接触化学覚といわれています。臭いを嗅ぐ臭覚は遠距離感覚ですが、接触化学覚は近距離感覚で、さわったその場所の臭いだけが分かります。接触化学覚は、触覚の先端部や肢の先、また口の周りのひげなどで感じます。
 さらに、チョウ類は紫外線を見る事ができます。モンシロチョウは雌雄の翅で紫外線の反射量が異なります。雄の前後翅の表裏では近紫外線をほとんど吸収し、雌の翅は紫外線を良く反射します(雄は雌の約2倍の尿酸を翅にもち、この尿酸が紫外線を吸収)。また、雌の後翅裏面の紫外線反射と後翅の裏の黄色との混合色が雄の配偶行動の刺激になっています。同じシロチョウ科の中でもモンキチョウは黄色の翅と前翅に黒い、後翅に橙色の斑点もち翅の外縁部が黒くなっています。日本のモンキチョウでは紫外線の反射には雌雄で差がありませんが、オオアメリカモンキチョウでは雌の翅の表面は紫外線を吸収し、雄の翅の橙色部分は紫外線を強く反射しています。雄は雌の紫外線の吸収により、また逆に雌は雄の紫外線反射をもとにお互いを認識しています。但し、近縁のアメリカモンキチョウでは視覚ではなく性フェロモンによりお互いを認識しているとの事です。
 シジミチョウ科の蝶は小型のかわいいチョウですが、ウスルリシジミは翅の表面が雄では青紫色を、雌では褐色をしています。翅の裏面では大きな紋様差はみられませんが紫外線に対して差異があり、雌の翅は紫外線を吸収します。雄はこの紫外線吸収を示す雌に求愛行動を起こします。このような紫外線吸収は幼虫時代に花に含まれるフラボノイドを取り込み、それを翅に蓄積した事で発現しているようです。特に雌でこの傾向が強くなっています。
 またチョウにはモルフォチョウに代表されるように、構造色で鮮やかな色を呈す翅をもったチョウがいます。これらのチョウでは反射光に独特の偏光パターンが現れます。ドクチョウの一部の仲間(シロオビドクチョウ)では雌雄で翅からの反射光で偏光が異なり、これを雄が雌の識別に使っている事が分かっています。
 日本では赤とんぼの姿が秋に良くみられます(最近はだいぶ少なくなりました)。一見、赤とんぼというとんぼがいる様に思ってしまいますが、赤とんぼという種はありません。アキアカネなどアカネ属のトンボが主な赤とんぼです。これらのトンボは未熟な時にはオレンジ色をしています。成熟すると赤い色になる事から、一見、婚姻色との関係がありそうですが、雌でも成熟により赤くなる種もあり、単純では無いようです。成熟すると赤くなるのは縄張り行動と関係がある事が最近判明しています。


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