MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

2.植物の色

果実と種子

 次に果実や種子についてみて見ましょう。果実は外側に皮(外果皮)があり、その中に果肉(中果皮)があり、中に殻(内果皮)におおわれて種子が存在しています。花が葉から出来上がっている事からこの構造も葉の構造と対比させる事ができます。葉の裏面の表皮が外果皮、海綿状組織や柵状組織が中果皮に、葉の上面表皮が内果皮に対応しているのです。子房が変化してこのような構造が出来上がったのです。梅、サクランボ、蜜柑、柿、イチゴなどの果物やナス・トマト・ピーマン・シシトウ・トウガラシなどの野菜はこのような構造をしています。
 一方、子房以外の部分が肥大化して果実(偽果)や野菜となった物があります。リンゴや梨、またキュウリ・カボチャ・スイカ・その他ウリ類の野菜です。花床が肥大化して果実になり、果実先端やその窪みに萼片や雄蕊、花柱が小さく残っています。
 果物や野菜には表皮や中の果実部分に色素が存在しています。赤〜黄色にはカロテノイド系色素が、また黄色〜紫色にはフラボノイド系色素が存在しています。例えば、トマトやスイカではリコピン、カキにはβカロチン、トウガラシではカプサンチンというカロテノイド系色素が、ナスや赤いリンゴにはアントシアニンというフラボノイド系色素が含まれているのです。最近はこれら色素の抗酸化作用に注目されていますので一度はTV等のコマーシャルで名前を聞いた事があるはずです。いずれにせよ受精した種子はこれらの色素に守られて育っている事になります。次に育った種子の散布についてみてゆきましょう。
 種子植物にとって種子の散布は子孫を残す上で大きな課題です。散布方式としては空気(風)や重力を利用する方式や動物を利用した方式がありますが、動物との関係をここでは見てゆきましょう。植物は種子散布を移動性の高い動物に依存する場合があります。このような動物散布には3つの方式があります。
   @ 動物の羽毛や体毛にひっかかって散布する方式(付着型
  A 種子自体が餌となるが、食べ残しや置き忘れられる事で発芽する方式
(食べ残し型
  B 種子ではなく種子の周りに果肉を発達させこれを動物に報酬として与え散布する方式(周食型

上記@の方式では動物に対する報酬はありません。Aでは種子自体が、Bでは果肉が動物にたいする報酬となりますが、花の送粉時には動物への報酬は送粉行動毎に与えられますが、種子の動物散布では、報酬は前払いと異なっています。此の意味では植物は気前の良さをアピールしている事になります。以下、主に鳥類や哺乳類が散布者になりますが、特に鳥類は歯をもっていません。食物を丸呑みするという食生活を送っていることから、このような種子散布には好適な動物といえるでしょう。
 次のAは主にリスやネズミなどの齧歯類、ヒグマ、タヌキやキタキツネなど、またカラス・シジュウカラ・キツツキ科の鳥、具体的にはスズメ、カワラヒワやキジバトなどがいます、などの比較的高い学習能力をもつ動物が散布者になります。この型では、動物にとっては餌の探索〜貯蔵までかなりの労働が必要であり、報酬としての種子も栄養価が高く、比較的大きな種子である必要があります。 クリやドングリなどのナッツ類はサルや熊、リスなどの哺乳類やカケスなどの鳥が好んで食べますが、ベリー類と異なり堅い殻をもちます。果皮が木質化し殻となり、中にデンプン質の実が入っています。この殻の内側に子葉が密着していますが、実を食べられる時に一緒に食べられたり、破壊されてしまう事になります。但し、リスやネズミまたカケスなどは地中に果実を蓄える習性があり、蓄えた後で隠し場所を忘れてしまい、結局、種子散布に貢献しています。
 一方、Bの周食型は哺乳類や鳥類に果実が報酬として食べられ、種子が糞として排泄される方式です。このため種子自体には動物の摂食から保護される工夫や果肉に特別な栄養体が発達する事が必要となります。また多くの果実には色がついています。この色で、果実がある事を動物にアピールしているのです。また種子自体や未熟の果肉に毒や消化阻害物質を含む事があります。果肉毒の例としては、柿の渋み(タンニン)、青い梅は青酸配糖体(アミグダリン)、ソメイヨシノもアミグダリン、ドクウツギは神経毒のコリアミルチンやツチンを、ノイバラでは呼吸麻痺を起こすフラボン配糖体ムルチフロリン、エゴノキではサポニンを持ち、オランウータンが好むドリアンも弱いアルカロイドを持っています。
 多肉果の毒は未熟時には毒が多く、熟すと弱くなるようですが、これらは脊椎動物に対し、一度に大量には食べさせない戦略でもあるようです。


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