上記@の方式では動物に対する報酬はありません。Aでは種子自体が、Bでは果肉が動物にたいする報酬となりますが、花の送粉時には動物への報酬は送粉行動毎に与えられますが、種子の動物散布では、報酬は前払いと異なっています。此の意味では植物は気前の良さをアピールしている事になります。以下、主に鳥類や哺乳類が散布者になりますが、特に鳥類は歯をもっていません。食物を丸呑みするという食生活を送っていることから、このような種子散布には好適な動物といえるでしょう。
次のAは主にリスやネズミなどの齧歯類、ヒグマ、タヌキやキタキツネなど、またカラス・シジュウカラ・キツツキ科の鳥、具体的にはスズメ、カワラヒワやキジバトなどがいます、などの比較的高い学習能力をもつ動物が散布者になります。この型では、動物にとっては餌の探索〜貯蔵までかなりの労働が必要であり、報酬としての種子も栄養価が高く、比較的大きな種子である必要があります。 クリやドングリなどのナッツ類はサルや熊、リスなどの哺乳類やカケスなどの鳥が好んで食べますが、ベリー類と異なり堅い殻をもちます。果皮が木質化し殻となり、中にデンプン質の実が入っています。この殻の内側に子葉が密着していますが、実を食べられる時に一緒に食べられたり、破壊されてしまう事になります。但し、リスやネズミまたカケスなどは地中に果実を蓄える習性があり、蓄えた後で隠し場所を忘れてしまい、結局、種子散布に貢献しています。
一方、Bの周食型は哺乳類や鳥類に果実が報酬として食べられ、種子が糞として排泄される方式です。このため種子自体には動物の摂食から保護される工夫や果肉に特別な栄養体が発達する事が必要となります。また多くの果実には色がついています。この色で、果実がある事を動物にアピールしているのです。また種子自体や未熟の果肉に毒や消化阻害物質を含む事があります。果肉毒の例としては、柿の渋み(タンニン)、青い梅は青酸配糖体(アミグダリン)、ソメイヨシノもアミグダリン、ドクウツギは神経毒のコリアミルチンやツチンを、ノイバラでは呼吸麻痺を起こすフラボン配糖体ムルチフロリン、エゴノキではサポニンを持ち、オランウータンが好むドリアンも弱いアルカロイドを持っています。
多肉果の毒は未熟時には毒が多く、熟すと弱くなるようですが、これらは脊椎動物に対し、一度に大量には食べさせない戦略でもあるようです。