MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

3.動物の体色・斑紋

コミュニケーションに用いられる体色

ロ)鳥類
 鳥にはシラミやダニなどの寄生虫がたかり、また細菌などの病気にかかる機会が多いようですが、健康な雄か否かを雌が判断するのに雄の色彩情報が使われているという説があります(雄鶏のとさかや肉垂の鮮やかな赤い色やライチョウの気嚢など)。また鳥類には緑も青も赤も黄色もあってカラフルなものがいます。鳥類の体色は、通常の保護色としての役割ではなく、交配相手を得て繁殖成功率を高めるという方向で進化してきたものだというのが最も有力な説です。鳥類は嗅覚があまり発達していない事もあり、同種間でコミュニケートするのに個々の姿を視覚に訴える事が中心となったようです。
 ミネソタ大学の調査では、139種の鳥類の雌雄の羽根の紫外線反射率を調べた所、90%以上の種類で雌雄に差異が見られたとの事です。また別の調査では雄が求愛ディスプレーを行う時に用いられる羽根の中には紫外線反射部位が多いとの報告もあり、雌は紫外線反射率の大きな雄に惹かれていると推定されています。なおキンカチョウという鳥では雌が雄を選択する時に、紫外線から青にかけての色が重要なシグナルとなっている事が確認されています。
 またクジャクのオスの長い尻尾や羽の目玉模様や数は、メスがオスを選択する基準の1つになっています。メスは目玉数が多く、目玉模様がきれいなオスを選択する傾向が強く、この選択圧でオスはますます華麗になる方向に進化したと考えられているのです。但し、なぜメスはこのような好みをもつのか、という点に関しては諸説ありはっきりとしていません。
 一方、繁殖期の一時期だけ嘴、眼先、足、趾(あしゆび)などが鮮やかな色に変わる(婚姻色)場合があります。アオサギは通常、嘴が黄色から橙色をしていますが、繁殖期には赤味が強くなります。またサギの仲間であるコサギやリュウキュウヨシゴイでは通常、眼先が黄色から褐色ですが、繁殖期には眼先が赤くなります。またコサギはこの他に趾も赤味を帯びてきます。
 ハチドリの1種でオナガラケットハチドリという鳥がいます。この鳥は尾が二股に伸び、先端がラケット状になっています。この種の雄は雌に求愛する時に、このラケットを体の側方上部に上げ、丁度、“万歳”をした格好で雌の前の空間でホバリングします。そして頭部の輝く紫色と、のど部の輝く青色をお辞儀を繰り返す事で交互に雌に見せ、次第にお辞儀を繰り返す速度を速くして求愛する、という高等飛行を行います。雌がこの飛行を気に入れば良いのですが、無駄骨を繰り返す事も多いようで、日頃の練習として若い雄を雌の身代わりにし、高等飛行の技術を磨きます。
 さらに、鳥類には
ひな鳥が親鳥の給餌行動を刺激するように口の内部に鮮やかな色(例えば赤や黄色)・模様をもつものがいます。スズメでは口内は黄色や赤色になり、嘴の縁が白くなっています。シジュウガラなどでは特に嘴の縁が発達しています。また、ハシブトカラスのヒナの口の中も真赤な色をしています。
 このひな鳥の口内の色が視覚刺激となり親鳥の給餌行動を司る内分泌系を活発化していると考えられています。また托卵して成長する鳥(例えばニシキスズメの巣に托卵するホウオウジャク)のひなでは宿主のひな鳥と同じ口内色・模様をもつものがいます。一方、逆に、セグロカモメでは親鳥の嘴は黄色をしており、その端に赤い斑点がみられます。この斑点がひな鳥の餌乞い行動を起こす事が確認されています。
 一方、鳥類でも成長に伴って嘴、虹彩、眼瞼などの色が変化する例が知られています。代表例は大型のカモメです。大型のカモメ(セグロカモメ、シロカモメ等)では幼鳥時期には嘴先端が黒い色をしていますが、成長するに従い嘴は黄色に変化します。セグロカモメではこの他に成長すると眼瞼(眼の周り)が赤くなります。
 またオオセグロカモメやシロカモメでは幼鳥から1歳程度までは虹彩が黒い色をしていますが、成長すると虹彩が淡い色に変化します。


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