MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

3.動物の体色・斑紋

鳥類の体色

 哺乳類と異なり、鳥類は4色の色覚を持っています。このため、赤や黄色、緑などカラフルな羽毛に彩られています。羽根の機能には、
 ・皮膚の保護:光、乾燥、外圧(摩擦)などから
 ・飛行機能
 ・体温調節
 ・外観の表現
などがありますが、この中では“外観の表現”が体色と大きな関係をもっています。この羽毛は爬虫類の鱗が進化したものですが、羽根の構造の基本をなしているのは角質層です。角質層の主成分は我々の髪の毛や爪と同じケラチンというタンパク質です。鳥の場合、羽基という羽根の原基の中から円筒形の複雑な角質形成物がつくられ、この先端が破れて羽根が展開します。また嘴なども鮮やかな色をしていますが、これは羽毛や嘴の角質化したケラチノサイトに色素顆粒を含み、またその色素顆粒が層構造等を形成する事で光の干渉・散乱現象を利用して鮮やかな色を発色しているのです(羽毛、嘴や爪、また足の鱗は皆、“表皮”から形成されており、これらの主成分はケラチンという蛋白質が主成分です。但し、羽根の場合、真皮組織である乳頭突起という細胞群が羽構築に際して刺激を与えている事が分かっています)。羽毛をとった皮膚の色は哺乳類と同じく、メラニン色素による色をしています。羽毛の色はこのメラニン色素と主にカロチノイド色素により発現しています。この点で鳥類は爬虫類からカロテノイド色素を受け継いだと言えるでしょう。
 鳥の羽は正羽と綿羽に大別され、皮膚に深く入り込んでいる羽芽が成長して形成されます(従って、羽は先端部ほど“古い”)。綿羽は羽軸がなくふわふわしており、生まれたヒナはこの綿羽を身につけていますが成長するに従い正羽が出てきます。綿羽はダウンともいわれ(防寒衣のダウンコートのダウンです)、正羽の下にあって体温を保ちます。正羽はフェザーとよばれますが、ニワトリの羽はほとんどフェザーが主体です。ちなみに羽毛のある恐竜が中国で見つかっていますが、この羽毛は飛ぶためではなく保温のために生まれたのではないかと推定され、卵を暖めていた恐竜の化石も見つかっています。
 正羽は、羽芽の最下部に後に羽枝や小羽枝となる乳頭が形成され、これが成長しますが、羽芽の細胞群では色素細胞が羽枝細胞に変化します。羽芽の成長に伴いメラニンの形成が行われ、小羽枝細胞にメラニン顆粒が入り込みます。そして後に細胞が角質化する際に、ケラチンの中にメラニンが様々な密度や形状で閉じ込められる事になります。このケラチンは鳥類や爬虫類に特有のもので(β−ケラチン)、繊維上のタンパク質です。メラニン以外の黄色や赤色のカロチノイド色素などは全て表皮の発生時に、表皮中に生じ、表皮が角質化する時に閉じ込められたものです
 メラニン色素は哺乳類同様ユーメラニンとフェオメラニンの2種があります。上述のように、羽枝は表皮層に囲まれた中に、メラニンやケラチンからなる軸部があり、メラニン顆粒は、棒状、管状(空気層を含む)、板状、空気を含む小胞状など様々な形をしています。このためケラチン層、空気層、メラニン層の3つの層の構造により光の干渉を起こし、虹色を発現する場合があります。ハトやクジャクの虹色は棒状タイプのメラニン層で、キジや七面鳥は管状の、ハチドリやケツアールは小胞状のメラニン顆粒による発色によるものです。
 また白い羽の色は、角質層に閉じ込められた、細かい気泡による散乱で発現しています。この気泡のサイズ(直径)が700nm以上になると、入射光が等しく反射散乱し白く見えるのです。白い色の鳥は多くいませんが、水面域で生活する鳥に多い色で、カモメ、ペリカンなどがいます。なお哺乳類の白い毛も同じ理由で発現しています、一方、青い色素は鳥にはみられません。ヒトやシャム猫の青い眼と同様、光の散乱(チンダル散乱)により発現しています。青い羽の羽枝の中心部には太いメラニン色素の層があり、それを多孔質のスポンジ状の角質(ケラチン)層が取り囲んでいます。波長の短い青の光はこの角質層で反射され、角質層を透過した波長の長い光はメラニン層で吸収され、純度の高い青い色が実現されています。インコやカケスカワセミの羽、ホロホロチョウの首の青色はこのようにして発現しています。
 フラミンゴはピンク色の羽を持っていますが、これはカロチノイド色素によるものです。動物園で飼われているフラミンゴはカロチノイド色素を含む餌を与えないと羽の色が次第に色が褪せて来ます。フラミンゴの羽の色は自然界では水中の青国狽ノより出ています。同じくカナリアの餌にカロチノイド色素が含まれないと黄色い羽が白くなります。パプリカを与えると赤い羽毛になるとの事で、これはパプリカのカプサンチンが影響しているとの事です。
 一方、ケラチン層を表皮層が取り囲み、この表皮層に黄色や赤の色素が沈着する事で角質層からの青い反射光と表皮層での黄色や赤の反射光が混合し、高竡などの色が出ている場合があります。セキセイインコの告Fの羽やブッポウソウやアカショウビンの紫色はこのようにして発現しています。なおセキセイインコの嘴の根元にも青い色が認められますがこれもチンダル散乱によります。なおキジの赤い乳頭突起やにわとりの黄色のすねやカギ爪はカロチノイド色素による色です。但し、にわとりの赤いとさかにもカロチノイドが存在していますがその色は血液中のヘモグロビンの色による色です。
  大部分の鳥では年1回、繁殖期の後に羽根が生え替わります(換羽)。なかには一度に生え変わる慌て者もいますが、通常は、生え変わる順番が種により決まっています。なお4000万年前の鳥類の羽の化石がドイツでみつかっており、 羽の表層にあるメラニン色素の粒子が光を反射することによって色を出していた事が、2009年に確認されました。



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