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 私MIYUがバレエを始めたのは2006年の7月。中年になってからの、かなり遅めのスタートでした。40才になった頃にスポーツクラブの柔軟性検査で、「あなたは70代の女性の平均より硬いです。」と厳しく指摘された事があり、柔軟性には全く自信はありませんでした。
 ですから、まさか自分がバレエを始めるとは思っていませんでしたが、新しく入ったスポーツクラブにプログラムの一つとしてバレエがあったため、「どんな事するのかな〜♪でき
なきゃ途中でぬけ出せばいいや〜。」と軽い気持ちでスタジオに入ったのです。ああ、思えばあれが運命の第一歩でした。
 やはり身体は硬く、ストレッチの段階で音をあげそうになりました。だって、インストラクターの指導通りにやろうとしても全く身体は動かず、しかも回りにはスプリッツや脚抜きをいとも簡単にやってのける人がたくさんいたのですから。しかし前屈で床に手がつかないのも私だけではなく、そういう人も三分の一ぐらいはいたため、インストラクターの叱咤激励にのって硬いなりに何とかがんばりました。
 その後のバー・レッスンも手足のポジション、その他何だかんだとわけのわからない事をいっぱい言われて困惑するばかりでしたが、まわりの上手な人の真似をして、必死でついていきました。
 こういう事を繰り返すうちに私は何もできないながらにバレエに夢中になっていったのです。
 そうして一生懸命にレッスンに出るうちに、段々と柔軟性や身体能力というのは、バレエにとって必須のものである、という事がわかってきました。そして柔軟性があってバレエが上手な人はスタイルがいい事が多く、それによって踊っている姿がより美しいのだという事もわかってきました。
 わかったのはいいのですが、どれも自分にはないものばかり。「70代の女性の平均よりも硬い」身体を持ち、当時157cmで60kg近くもあった私は岐路に立たされました。
 つまり…。もうこんなにも最悪の条件ではいっそバレエをやめてしまうか…それとも、コンプレックスを克服しながら少しでもバレエ向きの身体を作るべく頑張り続けるか…。
 最初の頃は身体の硬い人もたくさんスタジオにいたのですが、数ヶ月経つうちに自然淘汰のように、回りは柔軟性のある人がほとんどになっていきました。硬い人はやめていき、新たに柔軟性に自信のある人がぞくぞくと集まってきていたのです。身体が硬いのに残っていたのはよっぽどバレエが好きな人で、私を含めて数人のみでした。
 そんな中で私はバレエを続ける事を選びました。だってバレエは少女時代からの憧れでしたから。それが機会に恵まれず、こんな年になったとはいえ、やっと始めることができたのです。
 そして太って硬い身体をした中年の私は、バレエを人生後半の友として選びとり、少しでもバレリーナに近づくべく努力を始めました。


 ※ 体重の方は1年半ほどでかなり落ち、普通に小柄な身体となりました。



 こうして私のストレッチ大奮戦は始まったのです。しかしこれが一筋縄ではいかない大変な代物でありました。というのは、ストレッチというものはただ頑張ってやればいいというものではないのです。身体の条件は人それぞれ。同じ人であっても、いつも同じではありません。ですから、どういう風にストレッチをやって行けばいいのか、なかなか的確にはつかめないのです。そして間違ったやり方をしてしまうと、身体を痛めた上にますます硬くなってしまうのです。
 もちろん、スポーツクラブでもバレエスタジオでもストレッチの指導はしてくれますが、バレエの先生方というのは子供の頃からずっとバレエを続けて来た方々であり、身体が柔らかいのは当たり前になっておられますから、柔軟性があるのは前提としてのストレッチを指導されます。
 しかし身体が硬い人間はそれについて行く事ができないのです。そこで何とかついて行こうとして無理をします。するとオーバーストレッチになった身体は故障を起こし、肉離れ等が頻繁に起きるようになって、硬い身体がますます硬くなっていきます。
 もちろん先生方は「無理はしないで下さいね。むやみに頑張ると逆効果になりかねませんよ。」と忠告はしてくださいます。しかし、先生の言う通りにやろうとすれば、硬い身体には必然的に無理になってしまうのです。
 こうして私は「いつかはきっと柔らかくなる!」と信じながら頑張ってストレッチを続けていましたが、ますます身体を硬くしてしまい、そのうちストレッチそのものが怖くなっていきました。
 そしてついには、内心では「これはいかん、何とかしなければ…」と思いながらも、「開脚やスプリッツなんかできなくたってバレエはできるも〜ん、あそこまで足を開く動きなんか滅多にないも〜ん」と自分の柔軟性のなさを正当化するようになり、いつしかストレッチから遠ざかっていきました。
 
 そんな矢先、転機が訪れました。バレエ歴の長い上手な人たちと一緒にストレッチをしながらおしゃべりをしていた時の事です。
 「MIYUちゃん、それじゃ真っ直ぐに立ててないよ。重心が小指側にばかりかかっちゃいけないの。それに足先と膝が違う方向を向いているじゃない。まだちゃんと開いていないのに、無理しちゃダメよ。」
と言われてしまったのです。
 思わず「ガビーン!!」とショックを受けました。自分じゃアンデオールはできる方だ、と思い込んでいたものですから。立つ事すらちゃんとできていないとは思ってもいなかったものですから。
 
※ 実際は腰や背中、それに続くお尻や脚までがカチンカチンに固まっているものですから、アンデオールは至難の業だったのですが…。また、重心が外側に偏っており、親指が浮いていたので、まずはその矯正が必要でした…つまり単なるガニ股に近かったのです…。
 この時はじめて気がついたのです。なぜ開脚やスプリッツが必要なのかを。確かにバレエを踊っていてあそこまで足を開くという事はプロでもない限り、あまりないでしょう。
 しかし、開脚やスプリッツができるほど骨盤あたりがコアまで柔らかくなければきちんと引き上げて立つ事ができないのです。きちんと立つ事ができないという事は、何もきちんとできない、という事です。きちんと立つ事はすべての基礎となる事ですから。
 そこで私は決心したのです。このままではダメだ、きちんとした指導を受けて身体をコアまで柔らかくし、きちんと立つ事ができるようにならなくては! そう言えば以前スポーツクラブに来ておられた70代の女性で身体が柔らかくかつスタイルのいい方がこう言っておられました。
 「柔軟性は年がいってからでもつくわよ。私だって50代半ばからストレッチを始めたんだから。でもね、集団のレッスンだけではダメ。それなりに費用も払ってパーソナルのトレーナにつかなくちゃ。」


 そこで私はスポーツクラブのレッスンだけではダメだと思い、パーソナルトレーニングを開始する事にしました。スポーツクラブにもパーソナルトレーニングはありましたが、バレエに詳しいトレーナの方がいいと思い、バレエ雑誌をよみあさって、バレエに詳しいというジャイロキネシスのスタジオの門を叩きました。
 専用の機械を使って人間が本来持っているナチュラルな動きを取り戻すというジャイロキネシス。けっこうなお値段です。特別料金を払って指名をすれば大先生にみてもらえるという事でしたが、まだ何が何だかわかっていない私は、ごく普通に申し込み、若い女性の方が担当となりました。
 そしてトレーングが始まったのですが、「あなたの場合はまだ機械を使うところまではいっていない。まずもうちょっと骨盤が動くようにしましょう。」という事で、床に座ったままの体操となりました。内容はスポーツクラブのものとあまり変わりません。それをトレーナーの方にマンツーマンでついてもらうだけの事です。 
 ここでも私の身体はトレーナーの方の言うようには動いてはくれませんでした。あまりの硬さにトレーナーの方も首をかしげるのみです。「どうしたらいいですか?」と聞いても「さぁ…。」というのみ。しかも途中でどやどやと引越屋さんが入って来て、専用の機械を運搬して行ってしまいました。もう一つスタジオがあって、そっちで使うんだそうです。
 むむっ、確かに私の身体は硬いが、少ない機械でたくさんの客をさばくためにわざと機械を使わないように仕向けているのでは…?そんな疑いが心の中に生じてしまいました。(真偽のほどはわかりません。)
 ともかく信頼関係が築けなければ、それ以上指導をお願いする事はできません。そこでジャイロキネシスは2、3回行ったところでやめる事にしました。



 そして次はロルフィングです。こちらもかなり高額。しかしパーソナル・トレーニングで安いものはありませんから、がんばって行く事にしました。ロルフィングは10回のセッションが1セットになっています。プログラムがあらかじめ決められていて、それに従ってやって行くのです。
 ロルファーの方はバレエには詳しいそうで、身体の状態を見、使い方を一つ一つ丁寧に教えてくださいました。筋膜リリースという手法を用いながら、少しでも理想に近い使い方ができるようにしていくのです。
 しかし、やはり私の身体の硬さは予想外だったようです。股関節の回までたどり着いた時、あまりの硬さにびっくりしたのか、「あなたは開脚なんかできません。靭帯を痛めて高齢になった時に歩けなくなるのがおちだから、もうあきらめた方がいい。股関節が前に付き過ぎているから、構造上無理なんです。」と言い始めたのです。
 またしても「ガビーン!!」です。目の前が真っ暗になりました。別にシルヴィ・ギエムみたいになりたいと言っているわけではないのです。バレエをやる者として当然の柔軟性、スプリッツや脚抜きができるようになりたいだけなのです。それでさえ無理だとは…。
 以前から軽い肉離れを繰り返していた私は、ロルフィングに行く半年ほど前から鍼灸院に通うようになっていました。そこで鍼灸師の先生にロルファーの方から言われた事を相談すると、先生は「そんな事ないよ。ロルファーの人は柔軟性に問題のない人ばかりみているから、ちょっとびっくりしているだけじゃないの?気にする事ないよ。」と言って下さいました。
 そう言えば整形外科で股関節のレントゲンをとってもらった時も「問題はないですよ。」と言われましたし。
 結局ここでも信頼関係が崩れました。鍼灸院や整形外科の先生の言葉を伝えると、ロルファーの方は「…やっぱり国家資格を持っている人は自信があるから…。」とか言い出して、ついにはセッションの約束を破るようになり、心を閉ざして逃げ出してしまわれました。そして7回を終了したところでロルフィングも中途半端で終わってしまいました。



 さて、それではどうすればいいのだろう。困っていたのですが、いつも行っているバレエスタジオの関係から、プロのダンサーのコンディション調整や治療をしておられる先生(鍼灸師と柔道整復師の資格を持った方です。)に診ていただく事になりました。
 その先生の診断では「硬いには硬いけど、性質の悪い硬さではありません。根気よく治療していけば、普通に開くようにはなりますよ。」との事でした。その言葉を聞いて、どれほどうれしかった事か!
 しかしその時は経済的に考えて何度も治療に通うというのは無理でした。そして結局治療を開始したのはほぼ1年後の事でした(2009年10月の事です)。
 治療は最初の頃は1回が70分(途中で50分になりました)のマッサージで、週1回のペースです。(時間はその人によってちがいます。)最初の頃は筋肉を細かく動かしながらほぐして行くマッサージがほとんどでした。
 実際には強くもんでいるわけではないのですが、身体がカチカチに固まっている私は痛くてたまりませんでした。声にならない声で「痛い、痛い…痛い!」と叫び続けておりました。(柔らかい部分であれば気持ちよいぐらいなのですが…)
 しかし4、5回ぐらいすると段々と外側の筋肉がほぐれ始めたらしく、痛いには痛いけど、痛気持ちいい感じに変わってきました。
 この頃からほぐすだけではなく、強烈なストレッチのような引っ張るスタイルが入ってきました。
 そして11回めに先生が言いました。「やっと表面がほぐれてきて、奥の方に手が入るようになりましたね。」
 大きな変化はなくても、少しずつ動きが楽になって来ているように思いましたので、私としては頑張って続ける決心に変わりはなかったのですが、先生としては、なかなか外側がほぐれてこないので、いやになってやめてしまうのではないか、と思ったそうです。すぐに結果が出る人はいいのですが、私のようになかなか変化が出ないと、そのままやめてしまう人が多いのだそうです。
 そしてコアの方までマッサージができるようになると、ほぐすだけではなく、先生による強烈なストレッチが多くなってきました。自分で普段やっているストレッチなんかストレッチとは言えない…というくらい、強烈に引っ張られます。すると、痛いには痛いけど、驚くぐらい身体って伸びるのですね。
 また、その頃から自分でも家でストレッチをするように、という指導がありました。何度も軽度の肉離れを経験し、開脚が恐くてしばらくやっていなかったのですが、身体の硬い人用のストレッチ法を教えてもらい、やってみました。すると異常な突っ張り感が消えており、股関節から足がすぅっと伸びていきます。おお、これがストレッチなのか。今までの私はストレッチをするつもりで関節を固めていただけだったんだ…と、やっと気がつきました。



 さて、治療を始めてから三ヵ月半(回数にすれば15回)が経ちました。未だに開脚もスプリッツもきちんとはできません。しかし開脚はかなり前方へ倒れていますし、スプリッツもかなりいい線行ってます。

   
 ※ 本当はここからが大変なのですが…。コアをほぐすのに難航しているため、鍼治療も併用しています。
 開脚とスプリッツができるようになれば、今度は上半身です。凝り固まった肩甲骨まわりをほぐし、きちんと肩甲骨が動くようにして、負担がかかっていたせいで盛り上がってしまった僧帽筋をもうちょっとエレガントにすらりとさせたいです。
 もしそれらの目標が達成できれば、コアにきちんと重心をもってきて、無駄な力を使う事なく引き上げる事もできるようになるでしょう。肩甲骨から腕を動かす事ができるようになれば、優雅な腕の動きも夢ではなくなるでしょう。
 痛くても、長くかかっても、その先には優雅に大きく踊る事ができる自分がいる…。そう思ってこれからもがんばります。



 かくの如く、身体が固まってしまっていた私の場合はストレッチの指導だけではなく、治療が必要でした。まずは自分でストレッチができるところまでほぐしてもらう必要があったのです。
 そしてある程度ほぐれてきたら、治療師の先生の指示に従いながらストレッチを始め、以後はストレッチが中心で、マッサージは補助的な役割となっていきました。
 私の場合はともかく背中、腰が硬く、それが足首の硬さにつながっているそうです。そこで手が届かない背中はともかく、脚全体と足首は毎日丁寧にマッサージをし、足の指グー&パーや、フレックス→ドゥミ→ポワントなどの足の筋トレもやっています。もちろん効果はそうすぐには出ませんが、微動だにしなかった足首も少しずつ動き始めています。
※ 筋肉がこぶのように硬く短くなった状態を筋硬結というそうです。この状態になってしまうと、血流も悪くなり、そのせいで栄養不足、酸素不足になった筋肉はますます硬くなって、使えない筋肉となってしまいます。

 私の身体の硬さの正体はこれで、それが身体の深部まで及んでいます。そういうわけなので、普通のマッサージや鍼ではある程度はほぐせても、深部の硬結までは効果が及びません。そこで、バイブレーターの振動で深層の硬結をとく特別な治療をしています。

 私のイメージとしては人間工事現場という感じですが、これは本当に効きます!この治療を数回受けてやっと腰や背中がほぐれはじめ(それまでは一枚の硬い板のようであった)、とりあえずスプリッツはできるようになりました。開脚もあと数センチで胸が床につきます。アラベスクもトゥシューズも絵空事ではなくなってきたかも…?

 但し、かなり大変な治療ですし、続けなければ意味がないので、相当の根性がいると思います。そういう意味では気軽にお勧めできる治療ではありませんが…。(2011.10 追記)

 さて、私の場合、ジャイロキネシスやロルフィングでひどい目にあっていますが、それは私の身体があまりに硬くて、まだそれらのボディーワークが役に立つ段階にまでいっていなかったのだと思います。
 誤解が起こらないように申し添えておきますが、決してジャイロやロルフィングがいんちきだと言っているわけではありません。
 ボディーワークとは、ある程度柔軟性のある方が身体の使い方を学ぶためのものなのだと思います。
 考えてみれば、私が払った料金は高いとはいえ、ジャイロやロルフィングの相場としては安い方でありました。トレーナの方々もまだ経験が浅い方々だったのではないでしょうか。もっと経験豊富なトレーナーさんならば、「あなたにはまず治療が必要です。」とかアドバイスしてくれたかもしれませんね。
 前述の通り、身体の条件は人それぞれです。これから頑張って柔軟性を手に入れようという方々は、まずはできれば国家資格を持った治療の専門家の方でバレエに詳しい方を探して、一度身体の状態を診てもらう事をおすすめします。
 そして先生からアドバイスをいただいた上で、自分で方針を決めてストレッチ道を進んでいかれると、身体を無駄にいためる事もなく、効率よく進んでいけるかと思います。
 それでは身体の硬い皆様、希望を捨てずにがんばりましょう!努力をすればその人なりのベストが手にはいります。私のドタバタ奮戦記が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。




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