第1章 基礎                                                  次頁         総合案内



第2節 グリア細胞

 グリア細胞は、脳神経系の中で神経細胞ではない細胞の総称です。アストロサイト、オリゴデンド
ロサイト、ミクログリアによって構成されます。


glial cells


(ミクログリア)
 ミクログリアは脳内で免疫を担当する唯一の細胞です。ただし、この免疫作用には、プラスとマイナ
スの両側面があります。下図を見ていただくと、ミクログリアが「諸刃の剣」と形容され、神経細胞に対する保護作用と損傷作用があることが分かります。つまり修復可能な神経細胞は助け、見込みのない神経細胞は攻撃・破壊して貪食します。 例えば、
脳梗塞などによって脳障害で死んでしまった細胞や老廃物などを自身の細胞内に取り込み除去することで、脳内を守る働きを持っているというわけです。

          microglia


(アストロサイト)

 アストロサイトの役割は上図に記載されていますが、統合失調症に関連する部分に絞って紹介します。

まずは三者間シナプスです。下図から、三者とは情報を送るニューロン、情報を受け取るニューロン、そしてそれらに隣接するアストロサイトであることが分かります。そしてそれぞれの間で物質(神経伝達物質・ATP)のやりとりをしているので三者間シナプスといいます。

 アストロサイトの役割の一つは、ニューロン間で遊離している神経伝達物質の回収です。これがグルタミン酸であれば、アストロサイトの表面にグルタミン酸トランスポートーといわれる受容体構造を作ります。実はこの機能はきわめて重要で、このトランスポーターに機能異常があると、神経伝達物質が三者間シナプスの間隙で高濃度になり、統合失調症、強迫性障害、その他の神経疾患を引き起こすといわれています。

       tripartite synapse


次に神経細胞へのエネルギー源の供給です。アストロサイトは血管から受けグルコースを自身の解糖系の流れに乗せ、その過程でできたATPを神経細胞のシナプスへ、ピルビン酸を神経細胞のミトコンドリアへ渡します。これらのATPとピルビン酸は、神経細胞の活動エネルギーとなります。ここで注目すべきは、この解糖系で副産物としてできたDセリンをグルタミン酸の受容体(NMDA受容体)に渡していることです。 


          tripartite synapse

(オリゴデンドロサイト)

オリゴデンドロサイトは、神経細胞の軸索部分を覆うミエリン(髄鞘)の形成を担います。ミエリンは絶縁体の役割を果たしており、電気信号を伝達する速度を速めたり、電気信号が軸索の外に漏れて、他の軸索が伝達している情報と混合したりするのを防いでいます。


            Oligodendrocytes