シナプス後細胞にて神経伝達物質を受け取る装置が「受容体」です。上図によると、受容体は4種類ありますが、統合失調症の病態を理解するには、イオンチャネル型受容体とGタンパク質共役受容体を理解すれば十分です。
(イオンチャネル型受容体)
イオンチャネル型受容体とは、シナプス後部にある神経伝達物質を受けとる仕組みの一形態です。この仕組みによって、後シナプスは脱分極か過分極します。
脱分極のケースでいうと、神経伝達物質が受容体に結合すると受容体タンパク質の立体構造が変化(チャネルが閉→開)し、これによって正のイオンを流入させ脱分極(電位状態の変化)を起こし、
活動電位発生から次の神経細胞へ電流が流れていきます。
イオンチャネル型受容体はスパイン構造をとることが知られています。スパインは神経細胞の樹状突起にあるトゲ(棘)状の構造であり、シナプス後部に形成されます。
また、細胞接着因子(下の図では、NRXN NLGN)によって握手するように接着しています。これは、
情報が確実にそして迅速に受け渡しできるためのシステムです。イオンチャネル型受容体の具体例は、NMDA受容体・AMPA受容体・GABAA受容体などです。
Gタンパク質共役受容体の仕組みは省略します。これはただ単に内容が複雑で著者が理解できないからです。2012年ノーベル化学賞の受賞対象になったのがこの受容体の仕組みの解明で、内容を理解できないのは「まあ仕方ない」と諦めました。ということで、仕組みではなく、働きのエッセンスを紹介します。
Gタンパク質共役受容体は細胞膜上で神経伝達物質やホルモンを認識する生体センサーです
受容体に何らかの神経伝達物質がくっつくと、受容体のセンサーは「これは〇×の神経伝達物質」
と認識して、その情報をメッセンジャーに伝えます。そしてこのメッセンジャー(情報)がいろいろなタンパク質合成の触媒的な働きをして、その結果、細胞は新しい機能を発揮するようになるのです。このためGタンパク質共役受容体の働きを、細胞外情報を細胞内情報へ変換し伝達する「スイッチ」のような役目と表現することもあります。
モノアミン系神経伝達物質の受容体は、ほぼGタンパク質共役受容体です。例えば、セロトニン受容体は 11種類ありますが、このうち、5-Ht3受容体のみが、イオンチャネル型受容体で、残りは Gタンパク質共役受容体です。
Gタンパク質共役受容体の機能面は上の通りですが、形態的特徴としてスパイン構造を持たないことがあげられます。これは、イオンチャネル型のような速さと確実性を求めていないからです。この点は、統合失調症の原因を遺伝子変異から捉えるときにきわめて重要なポイントです。 統合失調症の関連遺伝子の多くは細胞接着因子や神経回路の形成に関する部分に集約されていて、スパイン構造はまさにこれらの関連遺伝子のターゲットになっている部分なのです。