01.「天を欺いて海を渡る」の計
『やると見せかけてやらない』
この計略は人間の油断心理を見事についたもので、成功の確率も高いといえましょう。やるぞやるぞと見せかけて、みせかけだけでやらない、それを2・3回くり返すと、どんなに警戒心の強い人でも「またか」と油断が生じるものです。その敵の油断した所を見計らって、本当にやるのです。つまり警戒心の強い相手を油断させる時に使う計略です。
太史慈の脱出
孫策との一騎討ちで有名な呉の名将 太史慈がまだ浪人だったころ、孔融の救援に赴いた。孔融は劉備に援軍要請したいが、城は敵に囲まれて一人も通れない有様で、援軍を要請しに行くことができなかった。そこで太史慈が使ったのが、この計略である。
太史慈は城から出ると、戦おうとせず、突然射撃用の的を出し、射撃練習をはじめた。兵士はもちろん警戒したが、これが2・3回くり返されたので、3回目のころには兵士たちも「またか」と油断して、見向きもしなくなった。だが太史慈はそれを待っていたのである。3日目、突然太史慈は射撃練習のふりをして敵中突破を試みた。果たして敵は面食らって呆然と太史慈の突破を見送るしかなかったのである。そして劉備の救援を要請することに太史慈は成功し、孔融を危機から救ったのであった。
この計略は応用が利く計略でありましょう。例えば格闘技でキックばかり打って、またキックが来ると思った時にパンチを打って相手の度肝を抜く、といった戦い方など、格闘技にも応用できます。要は2回程度安心させておいて、3回目程度で勝負に出る、とういうものです。戦争でも偽退却の計は、2回わざと負けて逃げると、3回目に伏兵が待っているというパターンが最も成功しやすいとされています。あなたも太史慈のように成功させることができるでしょうか?