04.「逸をもって労を待つ」の計
『敵をじらせて疲れを待つ』
待つことによって、敵を疲れさせ勝利を掴むいわゆる「じらし作戦」「牛歩作戦」です。短気な相手には簡単に成功し、その効果も大きいはずです。しかし相手が短気でない場合でも、根競べでこちらが勝てば、勝利することができます。この計略を成功させるには我慢強さが求められます。
陸遜の夷陵の戦い
劉備が大軍で呉に侵攻してきた時、呉の陸遜は周囲が短期決戦を推し進める中、この計略を使った。初め劉備の布陣にはスキがなく、陸遜が見てもとても勝てる見こみはなかった。短気な韓当などは戦いを拒否する陸遜を臆病者と罵ったが、陸遜は我慢して劉備軍が疲れてスキをつくる日をじっと堪えて待ったのである。陸遜には”敵は山道を歩いてきたから必ず疲れがたまっており、いつか疲れを見せるだろう”という確信があった。だからじっと堪えていることができたのである。その時までは亀のように動かないと心に決めていたし、動いたら呉軍は負けるとわかっていたのだろう。陸遜はひたすら耐え続けた。
その退陣はなんと半年も続いた。陸遜はこれだけの間、陣から討って出ようとせず、味方からの臆病者との誹謗にも耐えていたのである。そしてついに陸遜の読みは的中する。劉備軍はついに疲れはじめ、日陰のある森の中に布陣しはじめたのである。森は一発逆転の火計をしかけるにはもってこいの地、陸遜はこれをまっていたとばかりに火計で攻めたて、蜀の大軍を殲滅し呉の国を救ったのである。勝ち戦の後、陸遜を馬鹿にしていた者がこの計略に感服し、謝りに訪れたのはいうまでもない。
いつまで待っても仕掛けてこない相手や、じれったい人間に、普通の人はいらだちや疲労感を覚えます。それを利用したのがこの計略です。人間心理をついた計略なので応用のしがいがあるのないではないでしょうか。三国志のこの後の時代にも、有名な孔明と司馬懿の五丈原の対陣があります。「先に動いたら負け」という局面が勝負にはよくあります。これは戦力が均衡した時によくおきる現象です。巌流島で武蔵が使ったのもこの「じらし作戦」で、武蔵はこの計略で小次郎に勝つことができました。(宮本武蔵の遅刻戦法は有名です。)この計略は必ずといっていいほど先に動いた方(じらされた側)が負けます。もし自分がこうした局面に出会ったら、劉備の失敗を思い出し、陸遜を見習って相手に根気で勝つ気概を見せつけてあげましょう。要は精神力の問題ですね。