05.「火につけこみおしこみを働く」の計
『一瞬の弱みを逃すな』
この計略の意味。要は「火事場ドロボウ」です。どんな強敵でも、混乱やパニックの最中は抵抗する力を持っていません。本人達はそれどころではないからです。そこにつけこんで勝利を掴んでしまおうという、スポーツマンシップのかけらも感じられない戦法です。しかしそれゆえに有効であるともいえます。
孫堅の死
後漢末の英雄の孫堅は、曹操や劉備・袁紹などとともに、新時代のリーダーとして人々から期待され、人気もあった。その武勇も並ぶ者なき勢いで、将来を期待されていた。劉表はこの孫堅に攻めこまれ、次々に陣を奪われてしまっていた。だが無敵と思われていた孫堅軍に、一瞬のスキができたのである。それは孫堅が陣を突出しすぎ、一瞬孤立してしまったのだ。これをチャンスと見た劉表軍の荊越は、妥協せずに孫堅を殺してしまったのである。主君を失った孫堅軍が収集つかなくなり、一網打尽にされたのはいうまでもない。
モラル的に問題のある計略ですが、勝負の世界では敵のピンチこそ自分にとってはチャンスといえます。その一瞬のチャンスに出会ったら、迷わず攻撃しすかさず勝利を掴むことが大事です。そこで躊躇した者は、せっかく天の与えてくれた勝利を逃すことになるでしょう。相手の弱点や怪我を狙う戦いは、紳士的ではありませんが、戦争や外交などの非情の戦いが求められる世界では必要な計略であるかもしれません。民族紛争に介入して植民地としてしまうなどという作戦が、ある時代には頻繁に行われていました。これもこの計略の流れであるといえましょう。