06.「声東撃西」の計


『Aと見せかけBを討つ』
 一言でいえば、敵の裏をかいた奇襲戦法です。A地点から敵が来るだろうと思わせておいて、B地点から攻撃することで敵の裏をかき、勝利をおさめるというものです。「東に声かけ、西を撃つ」という意味です。戦争だけでなく、様々な心理戦に応用することができます。

官渡の曹操

 袁紹と曹操が戦った「官渡の戦い」は、この計略が勝敗を決めた戦いである。袁紹と曹操は長期に渡り対陣し、互いに決め手となる作戦がなかった。その打開策として、曹操が使ったのがこの計略である。

 曹操はA地点(本陣・互いの主力が陣取る地点)に敵の視点を釘付けにしておき、さも決戦をすると見せかけておいて、相手がノーマークのB地点(敵の兵糧庫)を主力で攻撃し、敵の裏をかいて勝利を勝ち取ったのである。B地点は、もちろん前線ではないから袁紹も防備を弱めていた、そこに乗じた曹操の頭脳プレーの勝利であった。曹操はこの勝利によって天下を取ったといってもよく、この戦い方は、後世の戦略家に多く真似されるほどの、名戦術となったのである。


 右を攻めると思わせておいて左を攻める。左を攻めると思わせておいて右を攻める。格闘技の世界では「フェイク」としてこの計略が応用されています。奇襲作戦の大家、源 義経が得意としたのもこの作戦でした。義経はいつも正面から来ると見せかけて、とんでもないところから攻めこんで勝利をおさめました。しかしこの計略が一番親しまれているのは、サッカーの戦術でしょう。サッカータクティクスの基本はまさにこの「声東撃西」で、右ウイングが主力と思わせておいて、左ウイングを主力に使う、右から攻めるとみせかけておいて、左にすばやく展開し、左からシュートを打つ。と、いったものです。まさにこの計略は、奇襲戦術の基本でありましょう。合コンなどでも仲間を油断させるために利用するとよいかもしれませんね。