11.「李を捨てて桃に変える」の計
『一を捨てて十を生み出せ』
あるものを手放すことによって、それより優れたものを手に入れることです。一時は損をしたようにみえますが、長い目でみれば得をするという原理の計略です。すももを捨てて桃を手に入れるという意味の計略で、一手先を読んだ動きのできる人だけが可能な計略です。「捨てる勇気を持つものは、それ以上のものを得るチャンスをもつ。」そんな計略です。
姜維の登用
孔明は北伐の際、魏の夏侯淵の息子 夏候楙を捕らえた。孔明はしかしせっかく捕虜にした夏候楙を解き放ってしまう。周囲の将はこの孔明の行動を不思議に思った。夏候楙は敵の総大将であったからだ。なぜ孔明はこのような不思議な行動をとったのだろうか?実は孔明はこの時、魏の夏候楙の部下で、夏候楙などよりもはるかに優秀な人材
姜維を味方にしようと考えていたのである。孔明は夏候楙を利用して姜維と反目させ、結果、夏候楙などよりもはるかに優秀な姜維を得ることに成功したのである。この姜維が孔明亡き後の蜀を支えたのは周知の事実である。
「手に入れたものがつまらないものであった時、それよりも価値のあるものがそれを捨てることで手に入るならば、思いきって捨てることが好結果を生む」そういう考えがこの計略には秘められています。目先ばかり見て、先を読む目がないと、こうしたチャンスを逃してしまうことになります。外交の領土問題などで、つまらない土地を捨てて豊かな土地を手に入れるという戦術は、この計略の応用であるといえましょう。「情けは他人のためならず」という言葉があるように、一時的には損に見えても長い目で見れば得になるということも世の中にはあるということです。