13.「草を打って蛇を出す」の計
『敵の中にいる味方を探せ』
「敵中作敵」敵の中に味方を作る、あるいは敵の中の味方を探す。と、いった計略です。草を突っついて隠れている蛇を出すことからこの名前がついたと思われます。どの組織にも不満分子は存在するもの、その存在は味方からみればやっかい者ですが、敵から見れば最も強い味方です。活用しない手はありません。うまく使えば敵勢力を戦わずに自滅させることさえ可能です。
呂蒙の計略
関羽討伐作戦を担当した呉の名将 呂蒙がこの計略を使い、関羽に勝利している。関羽はいいかげんな部下に厳しい性格のため、部下には少なからず関羽に不満をもっているものが存在した。呂蒙はそれを利用したのである。関羽は魏に遠征することになり、その期間中は荊州を明けなければならないので、荊州を部下たちに任せた。その部下たちの中で、関羽へ不満を持つものを、呂蒙は甘い恩賞を餌に探しだしたのである。
探してみれば芋弦式に不満分子が現れたから呂蒙は歓喜した。この不満分子を利用して、呂蒙は関羽を孤立させ、荊州を奪い取ったのである。さすがの関羽の武勇も、この計略にはなすすべがなかったのである。
組織を倒す最も簡単な基本戦法は「派閥争いによる内部崩壊」で、あることは別の項でものべています。なぜこれが名戦術家に好まれるかといえば、自分たちの犠牲が最小限で済むからです。戦争をしなければ人も死なずにすむので、この計略は東西問わず利用され続けているのです。これを最も得意とした英雄は毛利元就でしょう、戦は極力さけ、敵の中に味方を作り内部崩壊させて国を滅ぼすパターンは元就の得意技です。この計略があったからこそ、毛利はあれだけの領土を手にすることができたのです。日本は大東亜戦争でこの計略を使い、中国を内部崩壊させようとしますが、周恩来らに見破られ成功することはありませんでした。司馬懿や家康といった「寝業師」が好む計略であります。ここは関羽の同情よりも、病気をおしてこの計略を成功させた呂蒙に喝采を送りましょう。