17.「煉瓦を投げて玉を引く」の計


『餌で人を操れ』
 何やら難しい名前の計略ですが、「レンガを投げて宝玉を得る」つまりはオトリでそのオトリ以上のものを手に入れる「海老で鯛を釣る」というような意味のことです。人間の物欲は古今東西問わず永久普遍のもの。そのためにこの計略は簡単かつ応用のきくものといえましょう。この計略は、いたる所で活用されていますが、わかりやすい所で、曹操の「撒き餌の策」を紹介します。

文醜の最期

 曹操と袁紹の決戦である官渡の戦いの前哨戦、延津の戦いで、曹操は袁紹軍の猛将 文醜に苦しめられていた。曹操は自軍の武将たちを文醜に挑ませるが、歯が立たない。そこで曹操が使ったのがエサで文醜を釣り、それに乗じて殲滅するという作戦であった。

 曹操は兵糧部隊をわざと山間に無防備状態で歩かせ、文醜を誘った。文醜はそうとは知らず、もうけものとその兵糧部隊に飛びついた。山の周りには曹操軍の伏兵が隠れ潜んでおり、兵糧奪取に没頭する無防備状態の文醜軍を奇襲。曹操は手強い文醜軍を、なんなく殲滅できたのである。


 曹操が兵糧をエサにしようと言い出した時、多くのものがもったいないと反対したことでしょう。しかし結果的に曹操は文醜を殲滅してその兵糧を取り返したのだから、何も失ってはいないということになります。頭のきれる曹操らしい戦運びではないでしょうか。安物株を買っておいて玉(おおハネする)になるのを待つ、何てこともこの計略の応用としてできますが、頭のきれる人でないと失敗は目に見えていますね、先を見る目が何よりも大事な計略といえます。失敗するとオトリのエサを失い損になります、くれぐれも注意しましょう。